Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JCIC 10(2): 31-35 (2026)
doi:10.20599/jjcic.10.31

症例報告症例報告

Gore Cardioform ASD Occluder留置後に生じた可逆性II度房室ブロックReversible second-degree atrioventricular block after transcatheter closure of ASD using a Gore Cardioform ASD Occluder

1埼玉県立小児医療センター循環器科Department of Pediatric Cardioligy, Saitama Prefectural Children’s Medical Center ◇ Saitama, Japan

2東京慈恵会医科大学小児科Department of Pediatrics, the Jikei University School of Medicine ◇ Tokyo, Japan

受付日:2026年1月9日Received: January 9, 2026
受理日:2026年4月13日Accepted: April 13, 2026
発行日:2026年7月31日Published: July 31, 2026
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心房中隔欠損症(atrial septal defect: ASD)に対する閉鎖栓であるGore® Cardioform ASD Occluder(GCA; W. L. Gore & Associates, Inc., Flagstaff, AZ, USA)は柔軟性が高くErosionが少ないとされるが,房室ブロックはまれに報告されている.症例は13歳女性.欠損孔18 mmのASDで,心房中隔長は44 mmであった.大動脈rimの一部が欠損し,上方のrimが乏しかったため,GCA 44 mmを選択した.展開直後よりI度房室ブロックが出現し,一時的にWenckebach型II度房室ブロックへ進展したが,ステロイド内服投与で10日後には改善した.房室ブロックの発生機序として,本症例では心房中隔長に対して大きな閉鎖栓を使用したことにより心房中隔が広範囲に覆われ,機械的圧迫を生じたことが原因となった可能性がある.一方,ステロイド治療開始後に房室ブロックの改善を認めたことから,可逆的な炎症性浮腫などの要因の関与も示唆された.GCAでも条件や閉鎖栓の選択によっては房室ブロックを生じ得るが,抜去は慎重に判断し,ステロイド治療を含めた保存的治療も考慮する余地がある.

The Gore® Cardioform ASD Occluder (GCA) is a flexible device with a low incidence of erosion. However, atrioventricular (AV) block has occasionally been reported when using the GCA. Here, we report the case of a 13-year-old girl with atrial septal defect (ASD). An ASD defect measuring 18 mm, a deficient aortic rim, and poor superior rim were observed. The atrial septal length was 44 mm. We selected a 44 mm GCA because of the deficient aortic rim and poor superior rim. After the device was deployed, a first-degree AV block occurred, which temporarily progressed to a Wenckebach-type second-degree AV block. However, the conduction disturbance improved within 10 days after initiation of oral steroid therapy. In this case, using a large-sized device relative to the septal length provided wide coverage of the atrial septum, and mechanical compression was thought to be the cause of the AV block. On the other hand, improvement in the AV block after the initiation of steroid therapy suggests that reversible factors, such as inflammatory edema, may also have been involved. Although an AV block may occur with the GCA depending on the anatomical conditions and device selection, the decision to retrieve the device should be made with caution, and conservative management, including steroid therapy, may be considered.

Key words: atrial septal defect; transcatheter closure; Gore Cardioform ASD Occluder; atrioventricular block

緒言

ASDに対する経皮的閉鎖術は,本邦では2005年に承認され,小児で広く施行されている.房室ブロックは代表的な合併症のひとつであり,閉鎖栓による房室結節の機械的圧迫や,異物留置による炎症反応などが機序として考えられている1, 2).一般に,II度以上の房室ブロックを認めた場合はデバイス回収,I度までの房室ブロックであれば経過観察とされているが,その明確な根拠は乏しい.

Gore® Cardioform ASD Occluder(GCA)は,ニチノールワイヤーで形成されたフレームを,細胞浸潤しやすい多孔性の延伸ポリテトラフルオロエチレン(expanded polytetrafluoroethylene: ePTFE)で覆った閉鎖栓で,その柔軟性から機械的圧迫やerosionのリスクが少ないとされる.今回我々は,GCAを用いたASD閉鎖後に一過性房室ブロックを生じた症例を経験したため報告する.

症例

13歳女性.身長150 cm,体重39 kg.既往歴および家族歴に特記すべき事項はない.12歳時,学校心臓検診で不完全右脚ブロックを指摘され,ASDと診断された.経食道心臓超音波検査でカテーテル治療の適応と判断され,治療目的に入院した.

治療前の心電図では右軸偏位と不完全右脚ブロックを認めたが,PR時間は162 msecで房室ブロックは認めなかった(Fig. 1).経食道心臓超音波検査では欠損孔は18×13 mm,長径が80°方向の楕円形であった.Ao rimは特に60°前後で欠損し,上方のrimは短く,ディスクで挟み込むことが難しい形態であったが,その他の部分は十分なrimが存在していた(Fig. 2).心房中隔長は44×34 mmであった.カテーテル検査では,肺体血流比2.4,肺血管抵抗1.06 Wood Unit·m2,平均肺動脈圧14 mmHgと,治療を忌避する肺高血圧はなかった.ASDのサイジングバルーン閉塞径(Stop-flow法)は,透視画像で18×21 mm,経食道心臓超音波検査で19×20 mmであった.大動脈rimの一部が欠損し前上方のrimが乏しいため,erosionの危険性を低減するために閉鎖栓はGCAが第一選択になると考えられた.また大動脈rimの支持性が乏しいことが予想され,ワンサイズアップの44 mmを選択した.手技は大動脈rimの欠損部をディスクで挟むことに難渋し,5回目の展開で留置に成功した.

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Fig. 1 Electrocardiogram at initial presentation showing incomplete right bundle branch block is observed. The PR interval was 162 ms, which is within normal range

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Fig. 2 Transesophageal echocardiography

A, B, C: From 0° to 87°, the aortic rim was deficient, and superior rim was poor, suggesting risk of device dislodgement. D: At 106°, the coronary sinus rim was adequate.

最後の展開後からI度房室ブロックが出現したが,約30分の経過観察でそれ以上の房室ブロックへの進展を認めなかった.欠損孔・rimの形態・心房中隔長・留置手技の困難さからは,状況を変える他閉鎖栓の選択肢はないと考え,外科的除去の可能性を説明したうえでそのままGCA 44 mmを留置した(Fig. 3).帰室直後の心電図では,PR時間が一時的に200 msecまで改善していたが,治療12時間後にはWenckebach型II度房室ブロックに進展し,治療24時間後には再びPR時間330 msecのI度房室ブロックに戻っていた(Fig. 4A, 4B, 4C).

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Fig. 3 After GCA deployment. The right atrial side (★) of the disc was positioned close to the atrioventricular node

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Fig. 4 Serial electrocardiographic changes following GCA deployment

A: Immediately after the procedure, first-degree AV block with a PR interval of 200 ms. B: Wenckebach-type second-degree AV block 12 hours after the procedure. C: First-degree AV block with a PR interval of 330 ms 24 hours after the procedure. D: Postoperative day 10: PR interval improved to 163 ms.

閉鎖栓留置に伴う炎症・浮腫の改善に期待し,治療2日目(48時間後)からプレドニゾロン60 mg/dの内服を開始し,4日目から30 mg/dに減量した.PR時間330 msec程度のI度房室ブロックが持続したが,症状なく経過したため,治療5日目に退院した.治療10日目の外来受診時にはPR時間が163 msecに改善し,房室ブロックは軽快した(Fig. 4D).プレドニゾロンの内服は治療11日目から20 mg/d,治療15日目から10 mg/dと減量し,治療18日目に終了した.その後約1年の経過観察で房室ブロックの再燃はなく,閉鎖栓に関連するその他の合併症も認めていない.

考察

本邦ではASDに対する経皮的閉鎖栓として,Amplatzer® Septal Occluder(ASO; Abbott Medical, Plymouth, MN, USA),Occlutech Figulla® Flex II Occluder(FSO; Occlutech GmbH, Jena, Germany),GCAの3種類が承認されている.GCAは柔軟性が高く,組織への機械的圧迫・刺激が少ないことが特徴で,これまでerosionの報告もない.

一方で,GCA留置中または留置後の房室ブロックの報告はわずかながら存在する.Dittrichらは,GCA留置後に不可逆的なIII度房室ブロックに至り閉鎖栓除去を要した症例を,Figueras-Collらは可逆的であったII度房室ブロック症例を報告している1, 2).これらの報告では,ASOにおける既知の報告と同様,閉鎖栓による機械的圧迫や異物による炎症反応を原因として指摘している.

本症例では,房室ブロックはGCAの留置直後から認めており,これは機械的圧迫の関与を示唆する.Sudaらは,ASO使用例における房室ブロックの危険因子として,大きな閉鎖栓であることや肺体血流比が高いことを挙げており,大きな閉鎖栓ほど房室結節近傍を覆う範囲が広がる点を指摘している3).本症例では後下方のrimは十分な距離があったが,欠損孔が大きかったことに加え,Ao rimが広範に乏しく,Fig. 2に示すように脱落が懸念される形態であったため,ワンサイズアップのGCAを選択した.この結果,心房中隔長44 mmに対して44 mmのGCAを留置し,治療後は心房中隔の広範囲を閉鎖栓が覆う形となったため,閉鎖栓による房室結節への機械的圧迫を生じた可能性がある.留置後の画像からは,房室弁との距離が近いこともこれを示唆する所見となる.

房室ブロックに対するステロイド治療の有効性については一定の見解が得られていない.ステロイドが奏功したとされるこれまでの報告は閉鎖栓の留置後,時間が経過してから発症した例や,発熱・CRP上昇を伴う炎症所見が認められた例である2, 4, 5).本症例では留置直後からの房室ブロックで,経過中発熱もなく,治療後の採血検査所見でも炎症を示唆する所見はなかった.一方で,留置に難渋したことによる組織の摩擦による浮腫を考慮しステロイドを使用したところ,治療5日目の退院後から,次に外来受診した10日後までの間に房室ブロックが改善した.ステロイドの効果か自然経過か明確に判断できないが,時間経過とともに改善したことは,機械的圧迫のみならず,炎症性浮腫などの可逆的要因も関与していたことを示唆する.本症例の場合にはII度房室ブロックが一過性であったために,ただちに抜去するのでなく,ステロイド治療を試しながら経過観察を行う猶予があると考えた.炎症を示唆する所見が乏しくても,一過性のII度房室ブロックであれば,ステロイド治療などを行いながら経過観察を行う余地がある.

結語

本症例は,GCAで房室ブロックを生じた数少ない報告のひとつになる.GCAは欠損孔サイズに対するディスクのサイズが大きくなる.心房中隔長に対して大きな閉鎖栓を使用する際には,欠損孔が房室結節から離れていても機械的圧迫が起こる可能性に留意が必要である.ただし,炎症を示唆する理学所見や検査所見がなくても可逆的な経過をたどる例もあるため,ステロイド治療は試す価値がある.

利益相反

本症例の報告にあたり保護者の同意と承諾を文書で取得した.

日本小児循環器学会の定める利益相反に関する開示事項はありません.

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