Journal of JPIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JPIC 3(2): 56-60 (2018)
doi:10.20599/jjpic.3.56

症例報告Case Report

低出生体重児に合併した左肺動脈近位部欠損に対して動脈管ステント留置術を施行した一例Stent implantation for patent ductus arteriosus in a low birth weight infant complicated by isolated left proximal interruption of pulmonary artery

1富山大学小児科Toyama University

2昭和大学病院小児循環器・成人先天性心疾患センターPediatric Heart Disease & Adult Congenital Heart Disease Center, Showa University Hospital ◇ Tokyo, Japan

受付日:2018年12月1日Received: December 1, 2018
受理日:2018年12月10日Accepted: December 10, 2018
発行日:2018年12月31日Published: December 31, 2018
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先天性心疾患を伴わない一側肺動脈近位部欠損は稀な疾患であるが,呼吸器感染や肺高血圧を合併することがあり,外科的治療を行う必要がある.症例は在胎34週,1799 gで出生の男児.低出生体重児のためNICUに入院し,入院時検査で肺動脈近位部欠損と診断された.将来的な外科的修復術を念頭に,左肺動脈の血流維持を目的として左腕頭動脈から起始する左動脈管にステント留置を行い,良好な血流を得ることが出来た.術後,大腿動脈の閉塞を合併したため,後日,左大腿動脈に対して経皮的血管形成術を行い,再疎通を得た.低出生体重児に合併した一側肺動脈近位部欠損に対し,患側肺動脈血流を維持するために動脈管ステント留置は有効である.血管損傷のリスクを考慮し,低出生体重児のステント留置にはアクセスサイトを十分に検討する必要がある.

We report a case of ductus stenting for a low birth weight infant complicated by isolated left proximal interruption of pulmonary artery, who was admitted in NICU for low birth weight. We successfully stented left ductus arteriosus originated from left brachiocephalic artery via retrograde approach from left femoral artery. But, the patient was complicated by left femoral artery obstruction following procedure, while we performed recanalization for left femoral artery. Ductus arteriosus stenting for isolated unilateral proximal interruption of pulmonary artery is effective procedure to maintain blood flow to the affected lung. It is important to choose proper access site for ductus stenting in a low birth weight infant to avoid vessel injury.

Key words: isolated left proximal interruption of pulmonary artery; patent ductus arteriosus stenting; low birth weight infant; axillary artery puncture; femoral artery recanalization

はじめに

一側肺動脈近位部欠損は,患側肺動脈が主肺動脈と連続性をもたない先天的な解剖学的異常であり,多くの場合,心室中隔欠損や総動脈管症,Fallot四徴症などの先天性心疾患に合併するが,先天性心疾患を伴わない孤発性の一側肺動脈近位部欠損が稀に存在する1).肺動脈欠損と称されているが,実際にはほぼ正常な分枝を持つ遠位部肺内肺動脈が存在し,ほとんどの場合は大動脈弓と対側の腕頭動脈から起始する動脈管により血流が供給されていることから,英語では,unilateral proximal interruption of the pulmonary arteryと呼ばれる.小児期から呼吸障害や反復する呼吸器感染,運動耐容能の低下を認めることがあり,成人期には喀血や肺高血圧を合併することがあるため,診断がつけば可能な限り肺動脈形成術などの外科的修復を行うことが望ましい.低出生体重児に合併した一側肺動脈近位部欠損に対し,血流維持を目的として動脈管ステント留置術を行ったので報告する.

症例

1. 症例

症例は,在胎34週1日に陣痛発来のため緊急帝王切開で出生した一絨毛膜二羊膜双胎の男児.出生体重1799 g.低出生体重児のためNICUに入院した.新生児呼吸窮迫症候群に対して肺サーファクタントの気管内投与を行い,日齢1に人工呼吸器から離脱した.入院後のスクリーニング心臓超音波検査で左肺動脈の描出が不良のため,小児循環器医による診察を行なった.心拍120回/分,呼吸数40回/分,SpO2 100%(室内気),血圧84/54 mmHg.呼吸音は清で心雑音を聴取せず,末梢冷感はなく,外表奇形を認めなかった.胸部レントゲンでは,心拡大は認めず,この時点で肺の血管陰影に明らかな左右差は認めなかった.心臓超音波検査で主肺動脈と右肺動脈の軽度拡大を認め,左肺動脈は確認できなかった(Fig. 1a).その他,右側大動脈弓と下行大動脈から左肺動脈に向かう細い側副血管を1本認めた.この時点で,左肺動脈近位部欠損を疑い,胎生期は,左肺には動脈管を介して血液が流れており,生後に動脈管の収縮とともに血流が途絶している可能性があると考えlipo PGE1の投与を開始した.翌日には左腕頭動脈起始部下面から,左肺へ向かう血流を確認出来るようになり(Fig. 1b),multidetector row CT(MDCT)で左側動脈管と左末梢肺動脈を確認することが出来た(Fig. 2).その後,将来の左肺の成長と遠隔期の合併症予防のためには動脈管を介した左肺への血流が必要と考えたが,lipoPGE1を持続投与しても左動脈管は閉鎖傾向となった.PGE1-CDへ変更し,動脈管が十分に再開通したこと,および末梢の左肺動脈を確認するために,ステント留置をスタンバイして日齢12(体重1750 g)に血管造影を行なった.

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Fig. 1 Echocardiography

a) Mildly dilated main pulmonary artery and right pulmonary artery. Left pulmonary artery is not detected in this view. b) White arrows show narrowing patent ductus arteriosus arising from left brachiocephalic artery.

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Fig. 2 Three dimensional reconstruction of the computed tomography

White arrows show patent ductus arteriosus draining into left distal pulmonary artery.

2. 動脈管に対する経皮的ステント留置術

右大腿動脈からのアプローチを選択し,3Frシース(メディキット株式会社,東京)を挿入,3Fr JRカテーテルで動脈管の造影を行なった.MDCTと同様に動脈管は左腕頭動脈下面から起始し,左肺動脈へ流入しており,良好に成長した左末梢肺動脈が描出された(Fig. 3a).計測値は,動脈管の近位部径は2.2 mm,最狭窄部径0.9 mm,左肺動脈径3.0 mm,動脈管長10.8 mmだった.今後の左肺動脈の成長のために動脈管血流の維持が必要と判断し,動脈管に対するステント留置術を行う方針とした.PDA起始部に留置した3Fr JRから0.014 inch peripheral guide wire Aguru™(Boston Scientific; Marlborough, MA)を左肺動脈末梢に留置,その後右大腿動脈に挿入した3Frシースを4Frシース30 cm長(メディキット株式会社,東京)に変更し,左腕頭動脈分岐部付近に留置した.ステントは,動脈管の計測値からMULTI-LINK 8® 2.5 mm/12 mm(Abbott; Chicago, IL)を選択し,動脈管の全長をカバーするように位置決めを行った後に拡張した(Fig. 3b).ステント留置後の造影では拡大された動脈管と左肺動脈の良好な血流が確認され手技を終了した(Fig. 3c).ステント留置術翌日の胸部単純レントゲン検査で左肺の鬱血所見を認めたが,利尿薬の投与で速やかに改善した.一方で,ステント留置後から右足背動脈の触知が困難となり,超音波検査で右大腿動脈は穿刺部付近から末梢の血流を確認できず,右大腿動脈閉塞と診断した.ヘパリン持続点滴を開始したが,その後も右足背動脈は触知しない状態が続いたため,日齢33,体重2250 gで右大腿動脈の経皮的血管形成術を行なった.

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Fig. 3 Patent ductus arteriosus stenting

a) Angiography of patent ductus arteriosus. The narrowest diameter of patent ductus arteriosus is 0.9 mm. b) Angiography at positioning of the stent c) Angiography after procedure shows well opened ductus arteriosus and good flow to left pulmonary artery.

3. 右大腿動脈に対する経皮的血管形成術

右腋窩動脈へ3Frシース(メディキット株式会社,東京)を挿入し,3Fr JRカテーテルと0.025 inchガイドワイヤー;Radifocus® (テルモ株式会社,東京)で右大腿動脈へアプローチした.造影で右大腿動脈は大腿骨頭付近で閉塞していた(Fig. 4a).0.025 Radifocusで比較的容易に狭窄部は通過し,カテーテルを狭窄部末梢へ留置した.ガイドワイヤーを0.014 inch peripheral guide wire Aguru™(Boston Scientific; Marlborough, MA)へ変更し,SHIDEN® (株式会社カネカメディックス,大阪)2.0 mm/2 cm, 18 atmでバルーン拡大を行なったがwaistは消失せず.同じくSHIDEN® (株式会社カネカメディックス,大阪)1.5 mm/2 cm, 18 atmでも同様にwaistは消失しなかった(Fig. 4b, c).術後の造影で,狭窄は残存するものの,大腿動脈は再疎通していることを確認できたため手技を終了した(Fig. 4d).手技直後から右手末梢の色調不良,橈骨動脈触知不良となったが,数日の経過観察で改善した.

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Fig. 4 Percutaneous transluminal angioplasty for right femoral artery

a) White arrows show occluded right femoral artery at the puncture point of prior procedure. b) Balloon dilatation for right femoral artery. c) Recanalized right femoral artery. White arrow shows remained stenosis.

考察

今回我々は,左肺動脈近位部欠損と右大動脈弓を合併した低出生体重児に対して,左腕頭動脈から起始する動脈管にステント留置術を行うことで,左肺動脈の血流を維持することが出来た.

孤立性の先天性一側近位部肺動脈欠損は,比較的まれな疾患であり,発生機序は第6鰓弓の発生異常とされている1).無症状で経過し,胸部レントゲン検査などで偶然診断される場合もあるが,年齢別に見ると,1歳未満では呼吸窮迫症状,1歳から19歳までは呼吸器感染の反復や血痰,20歳以上では運動耐容能の低下,血痰が症状として現れる2).6歳時の学校検診で肺高血圧から本疾患を診断された本邦での報告など,32%の症例で肺高血圧を合併するとの報告もあり2, 3),一側近位部肺動脈欠損と診断した場合は可能な限り患側肺動脈を解剖学的に正常な状態に修復することが望ましい.本疾患に対する治療として,主肺動脈と患側肺動脈を直接または人工物や自己組織を介在して吻合する一期的な外科的修復術とBlalock-Taussigシャント(BTシャント)や動脈管ステント留置により患側肺動脈の血流を維持した後に外科的な修復術を段階的に行う方法とが報告されている4, 5).本症例は出生体重1799 gと体格が小さいことから,外科的な一期的吻合術やBTシャントは困難と考え,動脈管ステント留置を選択した.また,プロスタグランジン製剤により動脈管の開存を維持し,体重増加を待つという方針も考えられたが,通常量のプロスタグランジン投与中に動脈管が閉鎖傾向となってしまたため長期間の開存維持は困難と考えて早期介入することとした.

肺血流の維持を目的とした動脈管に対するステント留置術は,BTシャントを代表とする外科的シャント手術の代替治療として特に海外では広く行われている.術後の肺動脈の成長や肺動脈径の左右差という点で外科的治療と同等以上の結果が報告されており6),Santoro等はNakata indexが100 mm2/m2未満のような低形性な肺動脈の方がより成長への効果が高いことを示している7).また,同じくSantoro等は,体重2.5 kg未満の低体重児でも動脈管に対するステント留置は安全に施行でき,肺動脈の良好な成長が得られることを報告しており8),本症例においても,今後の患側肺動脈の成長は十分に期待できる.

本症例では,1750 gの児に対して,2.5 mmのステントを留置し,術後に左肺鬱血を生じたが,利尿剤投与により速やかに改善した.Krammoh等は一側肺動脈近位部欠損の新生児と乳児,5症例の治療経験を報告しているが,5症例のうち4症例に動脈管ステント留置を行い,そのうち3例が術後に心不全と患側の肺高血圧を合併しており,ステントのサイズ選択には十分に注意を払う必要がある5).ひとまず患側肺動脈血流を維持するために必要最小限のステントサイズを選択し,その後,成長に応じて追加拡張を行うという方針が安全であると思われる.

動脈管にステント留置を行う場合,動脈管の位置により最良なアプローチ方法は異なる.Alwi等は鎖骨下動脈から起始する動脈管に対しては,大腿動脈から4Frロングシースと4Fr JRを使用することで,良好にアプローチできることを報告しており9),本症例では同様の手技により動脈管ステント留置をスムーズに行うことができた.一方で,術後に大腿動脈閉塞を合併し,経皮的血管拡張術を要する結果となってしまったことは反省すべき点である.大腿動脈に変わるアクセスサイトとしては内頸動脈と腋窩動脈が挙げられる.内頸動脈は歴史的に外科的にカットダウンしてシースを挿入することが多かったが,近年では穿刺によるシース挿入の報告も多くなされており,低出生体重児であっても術後の穿刺動脈の開存性は良好で,安全な手技であることが報告されている10).腋窩動脈穿刺のまとまった報告はないが,先のAlwi等の報告でも,大動脈弓下面から起始するいわゆるvertical typeの動脈管では腋窩動脈からのアプローチが良好であるとされているように9),特に動脈管ステント留置術では広く一般的に行われている手技である11).本症例では,術前にエコーなどで内頸動脈,大腿動脈,腋窩動脈の血管径を測定し,より合併症が起こりにくいアクセスサイトを選択するべきであった.

結語

低出生体重児に合併した左肺動脈近位部欠損に対し,患側肺動脈血流を維持するために動脈管ステント留置を行い,良好な結果を得た.術後の穿刺血管閉塞を予防するために,アクセスサイトの選択は重要であると思われる.

引用文献References

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