Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
JCIC学会事務局
〒162-0801東京都新宿区山吹町358-5アカデミーセンター
Journal of JPIC 3(2): 38-42 (2018)
doi:10.20599/jjpic.3.38

総説

カテーテル治療に使う医療材料のいろは

昭和大学病院小児循環器・成人先天性心疾患センター

受付日:2018年8月23日
受理日:2018年11月16日
発行日:2018年12月31日
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対象病変が多様な先天性心疾患に対するカテーテル治療には,多種類の医療材料が必要です.それらの特性や使用方法を熟知して使用すべきなのは言うまでもありませんが,保険診療体制のもとでは,適応症や償還価格なども意識する必要があります.

このような観点から先天性心疾患に対するカテーテル治療に用いる医療材料を見直してみました.

Key words: therapeutic catheterization; indication; reimbursement price; medical device

はじめに

先天性心疾患に対するカテーテル治療には多種類の医療材料が必要です.皆さんは何気なく使っているカテーテル,ガイドワイヤ,バルーンなどが何を目的として作られ,承認されているか意識しているでしょうか? ほとんど同じように見えるガイドワイヤ,バルーン,コイルなどの償還価格が使用目的,スペックなどによって驚くほど細かく規定されていることをご存知でしょうか?

日常臨床の中で何気なく使っているロングシース,ガイドワイヤ,マイクロカテーテル,バルーン,ステント,コイル,回収グッズをこのような観点から整理し,その使い分けを考えてみたいと思います.本稿の内容の多くは日本医療機器テクノロジー協会による2016年度版 特定保険医療材料ガイドブック1)

からの引用です.本書はカテーテル治療のチームまたは診療科毎に是非,1冊購入していただき,若手医師も含めてカテーテルに携わる方はご一読することをおすすめします.

ロングシース

カテーテル等の挿入部位確保を目的に使用するカテーテルであることと定義され,ダイレータ・カテーテルシース・ガイドワイヤのいずれかまたは全てを組み合わせたものであることとされています.サイズは内径のフレンチサイズで表記し,たとえば5Fシースには5Fのカテーテルやバルーンが通過します.外径は通常,内径+2Fですが,肉薄のものでは+1–1.5Fのこともあります.Glide Sheath Slender®(テルモ)という肉薄のシースがありますが,6Fシースで外径は7F,つまり通常の5Fシース相当の外径です.

シースは以下のように分類されます.

  • ①一般用;いわゆるショートシースで②–⑤以外のものです.償還価格は2,600円です.
  • ②蛇行血管用;シース有効長が20 cm以上のものまたは20 cm未満でプリシェイプされているもの.Brite Tip®シース(Cordis, Cardinal health)など.償還価格は3,410円です.
  • ③選択的導入用;シース有効長が40 cm以上であるもの(いわゆるロングシース).Cook Mullins® type, Hausdorf® type, Checkflo®シース(Cook)など.償還価格は15,900円.
  • ④大動脈用ステントググラフト用;償還価格は29,400円.
  • ⑤遠位端可動型;シースの有効長が40 cm以上で,操作により遠位端の角度が180度以上屈曲します.なんと償還価格は130,000円です.

ガイディングカテーテル,ガイディングシース

POBAや血管内手術を行う場合に血管内手術用のカテーテルを病変部に到達させることを目的に使用するカテーテルと定義され,屈曲に強い構造となっています.ガイディングカテーテルのサイズは外径で表示され,内径は製品ごとに微妙に異なるので注意が必要です.一般的には-1Fのシースに相当します.つまり,5Fガイディングカテーテルの内径は4Fシースの内径に相当します.

Brite Tip®(Cordis, Cardinal health),Mach 1®(Boston scientific),Heartrail II®(テルモ)などがあります.

ガイディングシースはダイレータがセットになり,ガイディングカテーテルとシースの両機能を一体化したもので,サイズは内径で表示されます.外径は製品ごとに異なります.Destination®(テルモ),SheathLess PV®(Cordis, Cardinal health),Parent Plus®(メディキット)などがあります.

償還価格は対象部位により異なり,腹部四肢用ガイディングカテーテルは22,000円です.ガイディングシースはダイレータ分2,440円高く設定されています.

ロングシース・ガイディングカテーテル・ガイディングシースを選択する上では以下のような注意が必要です.まず,使用するバルーン・デバイスなどが通過するサイズをよく知っておく必要があります.ガイディングカテーテル・シースは屈曲に強く,先端形状のバリエーションが豊富ですが,カテーテルは8Fくらいまで(内径7F),シースは6Fくらいまでです.したがって,9F以上の大径デバイスを通過するにはロングシースが必要で,特殊なデバイス用を除き,14Fくらいまでは入手できます.柔軟性と支持力はそれぞれ特徴があり,病変に応じた使い分けが必要です.例えば,屈曲が強い病変では柔軟性が優先されますが,シャフトが太くて硬めのバルーンやPalmaz®ステント(Cordis, Cardinal health)を運ぶ際には支持力も重要な要素になります.長さも重要な要素です.病変に到達でき,delivery systemに対応した長さに留意する必要があります.たとえばMullins®シースは75 cmですが,ステント留置の場合,シャフト長が80 cmのバルーンだと留置出来ません.操作性の観点からは,病変に到達する範囲で短いものが優れていますが,対象に適した長さのものを入手することはしばしば困難で,時に手作業による改良が必要です.

ガイドワイヤ

血管造影用カテーテルを目的部位に誘導することを目的として使用します.一般用は0.025, 0.032, 0.035インチなど通常のワイヤで,償還価格は2,210円,交換用は全長が180 cm以上のもので3,020円です.微細血管用は0.018インチ以下または0.018インチ以上で複合ワイヤ機能(ノンコイルシャフト部分とコイル先端部分で構成)を有するもので主として血管内手術用カテーテル等と併用します.Aguru®(Boston scientific),SV®(Cordis, Cardinal health)その他多くのものがあり,15,000円です.

ガイドワイヤはその構造から,ステンレスコアに細いワイヤを巻きつけてあるスプリングワイヤ,超弾性コアにプラスティックジャケットを施し親水性ポリマーをコーティングしたテフロンコーティングがあります.

特殊なガイドワイヤとしては,Lunderquist® Extra-Stiff Wire Guide(Cook)>Amplatz® Super Stiff(Boston scientific)>Amplatz® Extra-Stiff Whisker(Cook)>Radifocus® Stiff>Radifocus® Half-Stiff(テルモ)などのスティッフタイプ(硬い方から順に),手元の操作で先端に角度をつけることができる先端回転型スプリングワイヤ(デフレクティングワイヤ),穿通用のワイヤとして冠動脈用はConquest®(朝日インテック)ほか,末梢用はAstato®(朝日インテック),Jupiter® MAX(Boston scientific)などがあります.Radifocus®には先に示したスティッフやハーフスティッフの他に先端を成形できるEタイプ,屈曲・蛇行の強い血管に選択的に挿入するためのGTワイヤ(0.012, 0.014, 0.016インチ.45度,90度,ダブルアングル,テルモ)もあり,用途に応じた使い分けが必要です.

ガイドワイヤを選択する際には上記の他に,手技に応じたサイズ,長さ,硬度,先端柔軟長を意識する必要があります.カテーテル類の交換が必要な場合には,患者の身長や交換するカテーテル類の長さを考慮して,ガイドワイヤ長を決定します.冠動脈用ワイヤは一般に先端柔軟長が長く,安定した支持を得るためには柔軟部分を十分深く挿入する必要があります.

筆者はバルーン肺動脈形成術で0.035インチワイヤ適合のバルーンを使う場合は原則的にAmplatz® Whisker(Cook),0.014または0.018インチワイヤ適合のバルーンを使う場合にはAguru ®, SV®などを使います.Largeステントの留置にはAmplatz® Super Stiff,マイクロカテーテルの導入には016 GTワイヤ,閉鎖弁の穿通には末梢用の慢性完全閉塞用ワイヤを使います.

バルーン

特定医療材料としての拡張用バルーンは以下のように分類されます.

  • 1) PTAバルーン;冠動脈,心臓を除く動脈もしくは静脈もしくはシャント狭窄部の拡張またはステントを留置する際の後拡張を目的に使用するバルーン.
    • ・一般型・標準型;カテーテルシャフトの外径が4F超であって,目的部位へ到達するためガイディングカテーテル等による補助を必要としないもの.Mustang ®(Boston scientific),Sterling ®(Boston scientific)の一部,PowerFlex® Pro(Cordis, Cardinal health)などで償還価格は46,600円.
    • ・一般型・特殊型;カテーテルシャフトの外径が4F以上であって,目的部位へ到達するためガイディングカテーテル等による補助を必要とするもの.Coyote®(Boston scientific),SABER®(Cordis, Cardinal health),YOROI®(カネカ)などで67,500円.
    • ・カッティング型;バルーンに刃を有するもので138,000円.
    • ・その他;脳血管攣縮治療用,大動脈ステントグラフト用,スリッピング防止型(Lacrosse® NSE ALPHA, GOOGMAN)などがある.
  • 2) 弁拡張用カテーテル;イノウエ®・バルーン,Tyshak®, Z-MED®, Z-MED® II, BIB®(NuMed),TMP-PED®(東海メディカル)などは狭窄した肺動脈弁,大動脈弁または僧帽弁を拡張するため,または経皮的大動脈弁置換術における後拡張に使用するためのバルーンカテーテルで150,000円です.
    • 3)経皮的冠動脈形成術用カテーテルは59,200–170,000円です.

バルーンの性質や形状からは以下の特徴を把握する必要があります.

  • 1) コンプライアンス
    • ・コンプライアント;柔軟性が高く,抵抗の弱い部分ではより拡張します.
    • ・セミコンプライアント;バルーンの加圧に対して,ある程度バルーン径も拡張するタイプのバルーンで,全体的に柔軟性があるので高度屈曲部などの拡張に適します.ただし,拡張力はノンコンプライアントには劣ります.
    • ・ノンコンプライアント;バルーンに高圧を加えてもバルーンの径が規定された径よりほとんど大きくならないタイプのバルーンで硬いバルーンなので高度狭窄部の拡張にも対応していますが,通過性はやや劣ります.
  • 2) 耐圧
    • ・低耐圧;6気圧以下でコンプライアンスは高くできています.
    • ・高耐圧;6–15気圧でセミコンプライアントかノンコンプライアントです.
    • ・超高耐圧;15気圧以上に加圧できるノンコンプライアントバルーンです.
  • 3) ワイヤールメンはOver the wireとRapid Exchange(Monorail)typeがあります.
  • 4) バルーン形状は通常直線状ですが,屈曲病変に対しては拡大にともない屈曲するカーブ型も有用です.

バルーンを選択する場合にはその性状・特徴としてProfile, Trackability, Pushability, Crossability, Complianceなどを把握する必要があります.対象とする病変ごとに拡大率の基準がありますので,それに応じた適切な径のバルーンを選択します.一般にバルーン長は長いほうが安定しますが,長すぎると病変に隣接した正常構造物(PTPVでは三尖弁,PTAでは分枝血管など)に障害が及ぶことがありますので,注意が必要です.体格と大腿動静脈,頚動静脈などアプローチルートに応じたバルーンprofileも考慮する必要があります.弁形成術は通常,低耐圧で十分ですが,血管は病変により異なります.

マイクロカテーテル

カテーテルの外径が3.4F以下でカテーテルにマーカーまたはボールチップが付いており,造影剤・薬液等の注入を目的に使用するカテーテルと定義されています.

屈曲,蛇行の強い血管,高度狭窄への通過などのため子カテ,または孫カテとして使いますが,ワイヤを用いて目的部位にアプローチするオーバーザワイヤ型と,主として脳血管で使われるフローダイレクトがあります.オーバーザワイヤ型には外径2.5F以下でブレード構造を有するTransit®2(Codman),Prowler® Plus(Codman)など償還価格41,800円,外径2.5F以下でブレード構造を有しないもの(償還価格37,700円),外径2.6F以上3.2F以下で造影ばかりでなく圧測定も可能な暁ハイフロー,Progreat® Ω(テルモ)などの造影強化型(償還価格31,400円),カテーテル先端部のマーカーの他に,デタッチャブルコイル離脱部の位置を確認するためのマーカーを有する,Excelsior®(Stryker),Progreat® β3 2マーカー(テルモ)などのデタッチャブルコイル用(償還価格55,400円)があります.特殊なマイクロカテーテルとして,手元の操作で先端部分に角度をつけることができる遠位可動型治療用(LEONIS Mova®,住友ベークライト,償還価格73,100円)があります.

筆者は屈曲蛇行が強い病変や高度狭窄を介する圧測定や造影のために暁ハイフロー,Push coilの留置ではTransit 2, Detachable coilではExcelsior, Progreat β3など,AZUR®(テルモ),Ruby®(Cook)など018の内腔が必要なコイルではProgreat Ω, PX SLIM®(Cook),急角度の病変へのアプローチには,LEONIS Mova®,閉塞血管の穿通にはTotal across®(Medtronics)などを使います.

コイル

特定医療材料として,血流の遮断を目的に使用するコイルとして以下のものが挙げられています.

  • ・標準型コイル11,800円.
  • ・機械式デタッチャブル型コイル58,300円.
  • ・電気式デタッチャブル型コイル122,000円.
  • ・水圧式・ワイヤ式デタッチャブル型コイル111,000円.
  • ・特殊型コイル;動脈瘤等の塞栓促進を目的としてコイル表面または内部に加工がなされているもの.144,000円.

デタッチャブル型の離脱用機器は償還されないので注意が必要です.またプッシャーの償還価格は17,300円です.また,Amplatzer® Vascular Plug family(Abbott vascular)は血流の遮断を目的に使用するプラグと定義され償還価格は129,000円です.

ステント

特定医療材料としての血管用ステントは以下のように分類されます.

  • 1) 末梢血管用ステント;四肢の血管拡張術を実施する際に,末梢血管(頸動脈,冠動脈,胸部大動脈および腹部大動脈以外の血管)内腔を確保する目的に挿入留置して使用する.
    • ・一般型;バルーン拡張型または自己拡張型があり,償還価格は188,000円.
    • ・再狭窄抑制型;薬剤による再狭窄抑制機能を有するもので229,000円.
  • 2) 冠動脈用ステント
    • ・一般型136,000円
    • ・救急処置型グラフトマスター298,000円
    • ・再狭窄抑制型226,000円
  • 3) 脳血管用ステントセット492,000円

現状,肺動脈狭窄や大動脈縮窄を拡大することを目的として承認されたステントはありません.実臨床ではTable 1

のようなステントが使われていますが,いずれも適応外です.これらのステントのうち,Palmaz® XL(P4010)はステント単体で,その他はバルーンにマウントされて供給されています.しかし,Palmaz® large(P1808, 3008)は8 mmか10 mmのバルーンにマウントしたものしかなく,これ以外の径に拡大留置する場合には,目的とする拡大径のバルーンにリマウントする必要があります.リマウントした場合,留置用バルーンのFサイズ+2Fのロングシースが必要です.プレマントされたPalmaz® largeの推奨シースサイズは10Fですが,12 mmまでであれば,PowerFlex® ProやMustang®などにリマウントすれば9Fのシースで挿入できるため,筆者は拡大径にかかわらず原則としてリマウントして使用します.P1808, 3008は15–18 mmまで,P4010は25 mmまで拡大できますが,いずれも最大拡大時には27–40%程度短縮します(Fig. 1).

Table 1 国内で使われている主のバルーン拡張型ステント
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Fig. 1 Palmaz®ステント.バルーンにマウントして販売されており(上),拡張時には短縮する(下)

血管内異物除去用カテーテル

血管塞栓物質,カテーテル・ガイドワイヤの破損片,ペーシングリード,下大静脈フィルター,金属ステント等の血管内異物を回収または除去することを目的に血管内に挿入して使用するカテーテルまたは経静脈ペーシングリードに挿入して固定する材料です.以下のように分類されます.

  • 1) 細血管用;カテーテル外径が3F以下.90,200円
  • 2) 大血管用;カテーテル外径が3Fを越えるもの.44,000円
  • 3) リードロッキングデバイス.90,200円
  • 4) リード抜去スネア.140,000円

グースネックスネア®(Covidien),ENスネア®(Merit medical),オスピカスネア®(平和物産)(Fig. 2

)などこれらの血管内異物除去用カテーテルを実臨床で使用する機会は少ないものと思われます.体外でこれらの器具に触れておくことが必要でしょう.JPICハンズオンセミナでは動物を使って透視下に実際に血管内異物回収を経験するすることができます.

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Fig. 2 血管内異物除去用カテーテル.グースネックスネア(左),ENスネア(中),オスピカスネア用カテーテル鉗子タイプ(右)

引用文献

1) 一般社団法人 日本医療機器テクノロジー協会 編.特定保険医療材料ガイドブック 2018年9月30日 中和印刷株式会社 発行

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