Journal of JPIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JPIC 3(2): 29-37 (2018)
doi:10.20599/jjpic.3.29

総説Review

エコーガイド下血管穿刺はお好きですか?Do you like echo-guided vessel puncture?

久留米大学病院小児科Kurume University Hospital

受付日:2018年11月29日Received: November 29, 2018
受理日:2018年12月1日Accepted: December 1, 2018
発行日:2018年12月31日Published: December 31, 2018
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本稿は,2018年1月19日JPIC学会の教育講演2でお話した内容をまとめたものです.エコーガイド下血管穿刺は,最低限知っておかないといけない知識やコツがあり,知らないまま手技を行うと必ず壁にぶつかり,挫折します.本稿が,これからエコーガイド下穿刺を始められる先生たちの「道しるべ」となることを願っております.

今回,解剖,エコーでのプレスキャン,実際の穿刺方法と順を追って解説しております.まず,針とプローブのなす角度が90度の時に一番針がよく見えます.穿刺針のエコーでの見え方は,針先,ベベル,シャフト部の3つで全く異なります.また,小径血管の穿刺可能な部位は短軸で見た場合,血管の真ん中のみと非常に限られております.これらの知識を集約させ,エコーガイド下に針先を血管内に誘導する方法を習得下さい.

Echo-guided vessel puncture needs knowledge and tricks that you must know, and if you perform a procedure without knowledge, you will be discouraged. I hope that this article will become the “guidelines” for the beginners who are starting echo-guided vessel puncture from now on.

I will explain anatomy, pre-scan with echo, puncture method. Firstly, when the angle between the needle and the probe is 90 degrees, the needle can be seen well. The appearance of the puncture needle with the echo is totally different in three points, the needle tip, the bevel, and the shaft part. If you puncture the small blood vessel, the best position of the puncture site is extremely limited to the middle of the blood vessel when looking at the short axis. Learn how to assemble these knowledges and guide the needle tip into the blood vessel under the echo-guide.

Key words: echo-guided vessel puncture; pitfall; anatomy

はじめに

私も10年以上前は,大腿動脈を触診し,盲目的穿刺にてsheath確保していました.自分の未熟な技術によるものか,当時を振り返ると血管損傷の合併症が多かったように思います.初めに,自分の指先の感覚の限界を感じたのが,大動脈縮窄症患者の大腿動脈触診でありました.治療のために,確実にsheath確保する必要があるものの,ピンポイントで大腿動脈を同定できないと悩みました.そんな時,心臓血管外科医がHadeco社のドップラー(ミニドップES-100VXなど)を使用して急性動脈閉塞の診察をしている姿を見かけ,これは使える!と思ったことを記憶しています.この器具を使用すると,ドップラー音で血管を同定・マーキングでき,穿刺することができました.個人購入したECHO SOUNDER:血流測定用8 MHz(Fig. 1 筆者の私物)を用いて,触知困難症例に対応していました.新しい機械好きという,私の気質もあって自然な流れで7~8年前より,エコーを使用するようになり,現在では,ほとんどの血管穿刺をエコーガイド下に行うようになりました.

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Fig. 1 ECHO SOUNDER(Hadeco, Inc. 都市名)

中心静脈穿刺に関する事故報告や医療訴訟をよく耳にする時代となり,そのほとんどの事例において病院側が敗訴するとさえ言われています.少なくとも,麻酔科領域ではエコーの使用なく合併症を起こせば絶対的不利という認識が確立しております.では,エコーを使えば大丈夫かというと,そうではありません.平成29年3月に一般社団法人日本医療安全調査機構より報告された『医療事故の再発防止に向けた提言 第1号 中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析 —第1報—』1)では,10例の中心静脈穿刺関連の死亡事例のうち,実に6例はエコーガイド下穿刺例でありました.それは,エコー下穿刺にはピットフォールがあるからなのです.

1. 見えていても成功しないエコーガイド下穿刺

エコーガイド下穿刺を施行するにあたり,これまで私は,『エコーガイドって役に立つんですか?』『どうせ針先見えない,ブラインドで刺すのと変わらない』『もっと穿刺できなくなる』『時間の無駄…』『機械に頼らずに穿刺できて1人前』と様々な辛辣な言葉を頂いてきました.それは,エコーの特性と,詳細な血管解剖が分かっていないために,そのような発言が飛び出すわけです.と言う私もエコーガイド下穿刺のコツがわかるまで,同じことを思っており,不慣れな時期は,乳児の大腿動静脈や,spasmを起こした狭小血管など見えているけど,成功しない状態が続きました.そこで,私は左手にプローブ,右手に穿刺針を持ち自分の左下腿の静脈を穿刺し続けました.文字通り血のにじむ努力の結果得られた知識をお伝え致します.

2. 穿刺に必要な大腿部の血管解剖

まずは,体表解剖ですが,穿刺すべき血管の後ろには,大腿骨頭がありますので,指先で押して凹まないところが穿刺ポイントとなります.裏を返すと,凹むところは腹腔内穿刺の危険のある腹腔内,もしくは動静脈瘻を起こす可能性のある足なわけです(Fig. 2:右大腿部 鼠径靭帯と皮膚のしわにマジックで点線).通常は,大腿骨頭の下端で大腿動脈は,浅大腿動脈と深大腿動脈に分岐し,大腿静脈には,大伏在静脈が内側より合流します(Fig. 2:右大腿部 赤線:大腿動脈 青線:大腿静脈).よほどの肥満患者でなければ皮膚のしわと大腿骨頭下端のレベルは一致します.よって,私は触診と,エコーによるプレスキャン,透視にて皮膚のしわと血管の分岐・合流が一致していることを確認し,皮膚の皺より穿刺を開始しています.

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Fig. 2 Right inguinal region

Marking of inguinal ligament and skin crease. Red-line: Femoral artery, Blue-line: Femoral vein.

ここで,要注意なのが血管走行の破格です.Fig. 3の症例では,深大腿動脈が骨頭の上端レベルから一度内側に向かい,大腿静脈の前面を走行しています.触知だけで,この患者のsheath確保を施行した場合,異常分岐した深大腿動脈の内側には静脈はなく,いつまでたっても大腿静脈にsheath確保できません.もしくはドンドン動脈よりに穿刺を続けると動静脈瘻を形成するわけです.盲目的穿刺では絶対に回避できない破格が存在することも事実であり,エコーによるプレスキャンは必須です.

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Fig. 3 Anatomical variation

3. エコーガイド下穿刺に使用するエコー

まずは,使用するエコーは,高周波のリニアプローブのついたものをお勧めします.これは,大腿動静脈は,よほどの肥満症例でない限り,体表から3 cm以内に存在することが多いため,深部の観察よりも,浅部での針先の描出を第1に考えての選択です.ちなみに我々は,GE社のVenue 40(穿刺専用機)を主軸に,予備器としてvivid-iを用いて2室あるカテ室の穿刺を行っています.穿刺専用機の使用は,起動の早さ・機体の取り回しのよさ(小型かつバッテリー内蔵)などメリットは大きく,非常に有用です.

また,アタッチメントを使用してニードルガイドを使用される先生もおられるでしょうが,私たちの施設では,長軸穿刺と短軸穿刺を組みわせて穿刺していることと,穿刺角度が制限されるニードルガイドは使用していません.

4. プレスキャン

プレスキャンの目的は,前述のごとく血管走行の確認・穿刺すべきポイントの同定です.成人先天性心疾患の症例では,幼少期に鼠径部のカットダウンをされていたり,新生児期~乳児期早期の頻回心カテ検査により,大腿動脈・静脈が閉塞していたりします.存在しない血管を穿刺し続けることは無意味であり,当院では心カテ検査前にsheath確保予定血管のプレスキャンを行い,閉塞疑い症例には事前の造影CT検査もしくは,カテ室にて閉塞を疑う部位の末梢静脈から造影し,血管評価をしています.

血管の走行は,まず,身体の長軸を真横に切るようにプローブを大腿部の皺に置きます(Fig. 4a 短軸での観察:駆血帯を血管に見立てて).大多数の症例では,そこからほんの少し末梢側に平行移動すると,動脈は深大腿動脈と浅大腿動脈に分岐し,大腿静脈には,大伏在静脈が合流します.この部位より中枢側が穿刺可能範囲です.大腿部の皺まで,プローブを戻し,次は中枢側に移動させます.鼠径靭帯を超えて腹腔内に血管が入っていくのが観察されます.次に,長軸での観察手順です.再度プローブを大腿部の皺に置き目的の血管を画面中央に置き,ゆっくりとプローブを90度回転させます.血管が,細長い土管のように描出されます(Fig. 4b 長軸での観察:駆血帯を血管に見立てて).この時に少なくとも3~5 cm程度長軸がきれいに描出できない時は,血管蛇行が強いと判断し穿刺困難と考えます.大腿骨頭のエコーでの見え方は,乳児と成人では大きく違います.成人と違い,大腿骨頭が化骨していないので,Fig. 5a(長軸)のように大腿骨がみえ,この上端が骨頭の下端になります.大腿骨頭そのものはみえません.成人においては,Fig. 5b(長軸)骨頭がしっかり見えます.穿刺開始は,下端部分で穿刺を開始し,骨頭の中央部分を目指して穿刺することになります.

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Fig. 4 Short and long axis view of vessel

The tourniquet is used like a blood vessel.

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Fig. 5 How to detect the femoral head

5. 長軸穿刺と短軸穿刺のメリット・デメリット

長軸穿刺は血管の長軸を描出して穿刺します.短軸穿刺は血管の短軸つまり,輪切りを描出して穿刺します.それぞれに長所と短所があります.長軸穿刺の長所は,針全体が見えやすい,穿刺の角度・深さが見えるという点で,短軸穿刺の長所は,左右の構造物の認識性がよいという点です.つまり,その反対がデメリットとなるわけです.長軸穿刺では,静脈を穿刺していたつもりが,左右にズレ動脈穿刺となってしまう可能性がありますし,短軸穿刺では,穿刺の角度・深さが分からなくなり,思っていたよりも針が深く刺さり,腹腔内穿刺になってしまう可能性があります.

6. プローブと針が作る角度について

教科書には,プローブと穿刺する針の角度は浅い方がいいと書かれているものがありますが(Fig. 6),実は,これでは針先はまったく見えません.かつて私は,色々と悩み考えました.外套付きの穿刺針で,金属針じゃないから針先が見えないのではないか?針が細いから見えないのではないか?などと色々と検討しました.結論は,エコーで針先が見えるか見えないかは『針とプローブが作る角度』によって決まります.短軸穿刺の場合,一番よく見えるのが針とプローブが90度の時です(Fig. 7a).針とプローブとのなす角度が90度±20度の範囲は見えますが,それ以外の角度では見えなくなります.つまり,教科書によく書いてあるように『針とプローブが作る角度』を浅くした場合,針そのものは消えることになり,何となく穿刺している周囲を確認することができるというわけです.対象が成人の内頚静脈などであれば血管横径は1 cmを超えることも多く,ざっくりと穿刺しても簡単に成功しますので,このような方法が推奨されているものと私は理解しています.新生児や乳児期早期の非常に細い血管を穿刺する場合には針先の描出は必須であり,針とプローブを90度に保つことが大切となります.皮膚から針を30度立てて穿刺するならばプローブは30度+90度→120度対側に傾けます.長軸穿刺では,プローブと針がなす角度が45~90度であれば見えます(Fig. 7b).よって,穿刺針と皮膚が作る角度は45度までということになります.深い部分の穿刺でどうしても,穿刺の角度がそれ以上になる場合は,長軸にしたプローブの中枢側を皮膚にめり込ませ,穿刺する方向に傾け,穿刺針との角度が浅くなるように調整してください.

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Fig. 6 Bad puncture in short axis

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Fig. 7 Visualization of the needle in the echo

7. 穿刺する血管の部位と血管前壁の穿破

まん丸の血管と,楕円の血管では穿刺可能部分に違いがあります.基本的に穿刺は血管のど真ん中ですが,血管が楕円形の場合は,少し中心を外しても血管がしっかり凹むため穿刺できます.まん丸の血管では,中心を外すと針が,血管を横滑りして,刺さりません.これが,ブラインド穿刺している時に明らかに拍動する動脈の真上を刺しているのに当たらない現象の理由の一つです.まん丸血管では,頂点からわずかに1 mmほど横にずれているだけで血管から横滑りして刺さりません.エコーガイド下穿刺において私は,血管の前壁で針先を0.5 mmほど左右に動かして,血管のど真ん中を穿刺するように調整しております.

長軸穿刺の模式図(Fig. 8)に示すように,穿刺針は血管内にめり込んで血管の前壁をtentingして,最後の最後でプチンと血管内に穿破します.刺さる直前までの状態を,短軸エコーで見ると,この図のように,いかにも血管に刺さっているように見えます.しかし,まだ穿破していないわけです.前壁を押しているだけの状態で,これが原因で,短軸穿刺で血管確保できないことがあります.これは,深い穿刺が合併症を起こす可能性のある内頚静脈穿刺によく見られる現象です.内頚静脈が深さ1 cmの浅い部位にあっても,皮膚から30度で穿刺すると,血管前壁までの距離が2 cmとなり,血管の前壁をtentingして穿破するまでに+α必要となります.この場合,24G 19 mmの穿刺針では届かず,22G 25 mmもしくは,20G 32 mmなどの針が必要となるわけです.穿刺する血管の深さ,穿刺の角度から,必要な針の長さを必ず処置前に検討しておいて下さい.また,深い部位に存在する血管を穿刺する場合(主に,大腿動静脈)の注意点ですが,プローブを強く押し付けて穿刺していると,穿刺後にプローブをはなすと,皮膚・皮下組織の厚みが戻ることで針が浅くなり血管外に針先が逸脱します.そのため,私は,エコーガイド下穿刺を始めたばかりの先生には,大腿動静脈は後壁までしっかり穿刺することが大切だと教えております.

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Fig. 8 Puncture of blood vessel (long axis and short axis)

8. 短軸・長軸での針の見極め方

短軸において,針の先端とベベル,シャフトの部分でエコーの見え方に違いがあります.針先は,点状にきらりと見えるのみです(Fig. 9a).ベベルの部分は2重,3重の点に見えます(Fig. 9b).シャフトの部分は,1個の点とアコースティックシャドーが見えます(Fig. 9c).常に,針のどこを見ているのかを意識してください.この意識がない人は,いつまでたってもエコーガイド下穿刺が上手になりません.針先を見失ったら,必ず皮膚の刺入部位にプローブをくっつけて,針とプローブの角度を90度にし,そこから針先方向にゆっくりと進めて下さい.まず,1個の点とアコースティックシャドーがみえ,次にベベルに到達すると,2重,3重の多重な高輝度の点となり,すぐに針先となり,1点の高輝度の点となります.長軸においては,針の全長が見えることが大切です.あと,針先・ベベルの部分にアゴが見えることが重要です(Fig. 7b).アゴがしっかりと見えていないと針の先端を見失い,想定よりも深く穿刺し,合併症を起こすことになります.

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Fig. 9 Needle (short axis)

9. 皮膚のマーキング

慣れるまでは,必ずマーキングしてから穿刺に臨みましょう.短軸で血管を描出して,血管の頂点をマーキングします.新生児の内頚静脈などは,下顎,鎖骨に邪魔されマーキングが十分できないこともありますが,穿刺する方向を見失わないようにするために,マーキングは有用な方法です.マーキングなしに,長軸穿刺から始めると,血管に対して斜めから針が入ることがあります.長軸穿刺が好きな先生は,この点は注意してください.

10. 実際の穿刺

1)用意

当施設で使用しているVenue40は短軸穿刺をする場合,プローブ中央に線が印刷されており,かつ画面には,この線と対応する部分に▼印があります.これにより,プローブの線の真下より穿刺すると,画面上の▼印の下に針が描出されます.もし,そういったガイド線がないプローブの場合は,あらかじめプローブに中央線の印をつけておき,それに対応する画面の位置にも印を入れてください,お手製の穿刺ガイドを準備しておくことで,穿刺が格段にし易くなります.

2)プレスキャン

処置中に安静を維持できない患者では,十分な鎮痛・鎮静下に処置を行います.当施設では,大腿動静脈穿刺は静脈麻酔による鎮静・鎮痛のみで,内頚静脈穿刺の場合は,協力の得られない新生児~小学生の場合は全身麻酔・挿管下に処置を行っています.鎮静・鎮痛が得られたら,必ず,穿刺する時と同じ条件でプレスキャンします(肩枕・腰枕の挿入や,頚部・下肢のpositioningなど).血管の重なり,破格などないかチェックし,短軸で観察した血管の頂点を全長5 cmほどマーキングしていきます.穿刺する周囲のマーキングは,消毒にて薄くなったり,消えたりしますので,マーキングのコツは,マーキングした5 cmほどの線の手前と向こう側に延長線を書いておくことです.これをしておくことで,針先の方向が明らかにずれている場合,指導医に指摘してもらうことができます.

3)局所麻酔

穿刺の前の局所麻酔に関する注意点は,2つあります.1つは,絶対にairを入れないでください.エコーが見えにくくなり,非常に困ります.全身麻酔下の処置であれば,ガイドワイヤーを入れた後に局所麻酔をすることも可能です.2つ目は,大量に局所麻酔をしないということです.大量に皮下と血管の間に局所麻酔をすると,血管が深部に押しやられて,難易度が急上昇します.

4)試験穿刺

私は絶対に試験穿刺はしません.昔のように16G針の外套にCVを通して,外套を最後にピールオフするようなタイプのCVカテーテルを盲目的穿刺する場合は試験穿刺が有用であったと思われます.しかし,現在のCVで使用するワイヤーは24G針も通過する0.018インチのものが多く,太い穿刺針を使う必要がなくなりました.本穿刺と同じ程度の太さの試験穿刺針を使うことにメリットはありません.新生児~乳児においては,試験穿刺は血管のSpasmを誘発する恐れがあり,私は局所麻酔を施行する際に,絶対に血管に当てないように指導しているほどです.

5)穿刺(刺入~血管前壁)

穿刺の開始は,短軸で行います.血管の真上から穿刺開始するためですが,この時に大切なのが,目的の血管を画面中央に描出し,しっかりとプローブを固定し動かないようにします.その状態で,視線を画面から手元に移します.穿刺の際は,画面を見ずに,手元を見ることがコツになります.挿入し始めは,エコー画面に見えてきませんので,画面を見ながら穿刺すると,あらぬ方向に穿刺の針が進むことになります.5 mmほど針先を挿入し,方向が定まったら,次に画面を凝視します.針が画面に見えてきたら,針をすすめる手を止めて,プローブを穿刺方向に5~10 mmほど進めます.この作業で,画面から針を消し去り,再度,目的の血管を画面中央に描出し,しっかりとプローブを固定し動かないようにします.先ほどと同様に,視線を画面から手元に移し,プローブのガイド線の真下に向かって穿刺針を調整したら画面を見て穿刺針をすすめます.すると,画面では,先ほどよりも血管に近いところに針が見えてくるはずです.これを繰り返し,血管の前壁まで針をすすめます.穿刺する血管が円形であれば,短軸穿刺のままで針を進めていくことをおすすめします.前述のごとく,円形血管は頂点を突かないと,横滑りして血管に刺さりません.左右には1 mmのずれも許されませんので,慎重に血管の前壁まで針を進めて下さい.もし,穿刺する血管が楕円形の場合,左右に1~2 mmほどずれても問題ありませんので,長軸穿刺をおすすめします.手軽に穿刺の角度,針全体を見ることができ,一気に血管前壁まで針をすすめることができ有用です.

6)穿刺(血管の頂点の確認)

短軸でみて,血管の頂点を穿刺するように左右に調整します.この時に,針先確認のコツですが,針を少し立てると,わずかに針先が深くなりますので,血管の頂点を突いていると,大きい血管ならハート型に血管が変形するのが見えてきます.数mmほどしかない細い血管なら左右対称に血管が押されるように見えます.血管の頂点を穿刺していることが確認できたら,その方向で穿刺して下さい.もし,血管の右側だけがつぶれて左が空間として残っているように見えれば針は右にずれており,逆に血管の左側だけがつぶれて右が空間として残っているように見えれば針は左にずれています.

7)穿刺(血管穿破から血管後壁)

内頚静脈の穿刺合併症予防として,後壁を穿刺したくない場合は,血管の頂点を確認した後に,針はそのままにして,プローブを長軸に変更します.針先と後壁の位置を見ながらゆっくりと針を血管内に進め,後壁を刺さないようにして外套が血管前壁を貫くところまで針をすすめます.外套が血管を抜ける瞬間は,血管前壁がグッと針に食い込むように見え確認できます.また,慣れた術者であれば,弾性の強い血管の穿刺の場合は,針先が血管前壁に刺さると軽く固定されたような感じになり,外套が前壁に刺さりこむと穿刺している手に反動として「ブチン」という感覚がきますので,これとエコー画面の針と血管前壁の動きをみて,確認できます.また,前述のごとく,大腿動静脈なら後壁までしっかりと穿刺して下さい.

8)ワイヤー確認

カテ室であれば,透視でワイヤー先を確認し,その後にエコーにて血管のどの部位を穿刺しているかを確認します.

9)ダイレーター挿入

穿刺の角度に合わせてダイレーターもしくは,sheathは挿入することが大切です.穿刺に不慣れな医師ほど,穿刺の角度よりもはるかに浅い角度で進める傾向があります.ワイヤーの挿入が浅めであったり,柔らかいワイヤーであれば角度を間違うと,皮下に迷入することがあります.

11. 内頚静脈穿刺の血管描出のコツ

Glenn術後など,内頚静脈よりsheath挿入することを想定し,内頚静脈穿刺についても簡単に触れておきます.当たり前のことですが,内頚静脈の背側にある椎骨動脈に注意が必要です.そのため,頚部の穿刺では,なるべく後壁を穿刺しないことが大切になります.頚部のエコーの当て方ですが,プローブを頚に垂直に当てると,動脈が静脈の下に潜り込み重なった絵になりよくありません(Fig. 10a).必ず,ベッドに垂直にプローブを当てます(Fig. 10b).そうすると,大多数の症例で動脈と静脈が分離できます.内頚動脈が,内頚静脈の真下に完全に潜り込む症例が6~9%ある1)と報告されていますが,私はこのような症例に遭遇したことがありません.プローブの当て方に依存しているものと推察します.

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Fig. 10 Position of probe (neck vessel)

12. ファントム

病院に模擬血管のファントムがあれば,ぜひ活用してください.私たちは,こんにゃくで代用しております.様々な種類のこんにゃくが販売されていますが,エコーガイド下穿刺にとって良いこんにゃくとは,色白・固め・ツブツブが少ないものになります.良いこんにゃくは生体組織のごとく見え(Fig. 11a),悪いこんにゃくはギラギラとして(Fig. 11b),刺した針が全く判別できません.こんにゃくを使ったファントムの作り方ですが,ストローを使って模擬血管をくりぬいて作成します(Fig. 12).コツは,まっすぐにズドンとくり抜くことです.ぐりぐり回したり,ゆっくりと作業すると模擬血管が蛇行します.難易度は,くり抜く深さと,ストローの太さで調節できます.くり抜いた後は,水をはった入れ物にいれて模擬血管内の空気を抜きます.当たり前ですが,そうしないとエコーで模擬血管が見えません.

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Fig. 11 Phantom of konjac

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Fig. 12 Making a phantom of konjac

最後に

振り返るとこれまで,動静脈瘻・仮性動脈瘤・腹腔内穿刺など様々な合併症を見てきました.エコーガイド下穿刺を始めて分かったことですが,穿刺可能な部位は驚くほどに限局しております.その限られた部位を外せば容易に合併症を起こすわけです.穿刺でエコーを使うというのは,感覚的には心臓外科医が拡大鏡をつけて手術をしているのと同じではないかと思っております.拡大鏡つけずにできないことはないが,使用すればその精度が格段に上昇するというわけです.安全で迅速,合併症のない穿刺の普及に本稿が少しでも役に立てばと願っております.

利益相反

開示すべき利益相反はありません.

引用文献References

1) 一般社団法人日本医療安全調査機構『医療事故の再発防止に向けた提言 第1号 中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析 —第1報—』平成29年3月

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