Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JPIC 2(2): 43-55 (2017)
doi:10.20599/jjpic.2.43

原著Original Article

2016年における先天性心疾患および小児期頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計~日本Pediatric Interventional Cardiology学会データベース(JPIC-DB)からの年次報告~Pediatric and congenital catheter interventions and ablations in Japan during 2016: Annual report from Japanese Pediatric Interventional Society Database (JPIC-DB)

1日本Pediatric Interventional Cardiology(JPIC)学会調査委員会JPICデータベースワーキンググループJPIC Database Working Group, Investigational Committee

2理事会Executive Board of the Japanese Society of Pediatric Interventional Cardiology (JPIC)

3静岡県立こども病院循環器科Department of Cardiology, Shizuoka Children’s Hospital ◇ Shizuoka, Japan

4東京大学医学部附属病院小児科Department of Pediatrics, Tokyo University Hospital ◇ Tokyo, Japan

5東京大学大学院医学系研究科医療品質学講座Department of Healthcare Quality Assessment Graduate School of Medicine, Tokyo University ◇ Tokyo, Japan

6久留米大学医学部小児科学講座Department of Pediatrics, Kurume University School of medicine ◇ Kurume, Japan

7東京女子医科大学循環器小児科Department of Pediatric Cardiology, Tokyo Women’s Medical University ◇ Tokyo, Japan, Okayama, Japan

8昭和大学横浜市北部病院循環器センターCardiovascular Center, Showa University Northern Yokohama Hospital ◇ Kanagawa, Japan

9榊原記念病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Sakakibara Heart Institute ◇ Tokyo, Japan

10埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科Department of Pediatric Cardiology, Saitama Medical University International Medical Center ◇ Saitama, Japan

11岡山大学病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Okayama University Hospital

受付日:2017年11月22日Received: November 22, 2017
受理日:2017年11月22日Accepted: November 22, 2017
発行日:2017年12月31日Published: December 31, 2017
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日本Pediatric Interventional Cardiology(JPIC)学会では,1993年よりカテーテル治療の手技・件数・有害事象に関する全国アンケート集計が継続されてきた.2013年よりNational Clinical Database(NCD)へのオンライン登録によるJPICデータベース(JPIC-DB)の実運用を開始し,3年の移行期間を経て,2016年の1年間に施行された症例から,すべてJPIC-DBに登録されることとなった.従来アンケート集計の頃より,先天性心疾患および正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈に対するあらゆるカテーテル治療手技と有害事象を包括的に登録対象とすることが,他の多施設共同研究にないJPIC集計の特徴である.本領域の著しい進歩を反映して,今回の報告からは,治療手技,標的部位,有害事象の分類がさらに細分化され,情報量が増加しつつ洗練されたものとなっている.今後も患者および家族への説明や,有害事象へのリスク管理,臨床研究,新規医療機器および技術導入に生かして頂ければ幸いである.

The Japanese Society of Pediatric Interventional Cardiology (JPIC) had been conducted the annual questionnaire surveillance regarding catheter-based interventional procedures and adverse events since 1993. The online registry system named JPIC Database (JPIC-DB) based on national clinical database (NCD) eventually went into operation with the initial enrollment of the actual cases since January 2013. After three years of transition period, the entire interventional and ablation cases during 2016 in Japan registered to the JPIC-DB. The striking feature of the annual surveillance so far has been comprehensive involvement of any form of pediatric and congenital interventional procedures and adverse events. Reflecting the prominent advancement in this field, the classification in therapeutic procedures, target lesions and adverse events is much more subdivided and refined. We hope that it continuously be helpful for explanation to the patients and their family, risk management, clinical investigation, and introduction of new device and technology.

Key words: catheter intervention; catheter ablation; database; registry; the Japanese Society of Pediatric Interventional Cardiology (JPIC)

はじめに

2016年の1年間にJPICデータベース(JPIC-DB)に登録された,先天性心疾患および正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈に対するカテーテル治療の集計を報告する.

対象および方法

2016年は全国ちょうど100施設でNational Clinical Database(NCD)の中でJPIC-DBが開設され,そのうち89施設(Table 5)から実際の症例が登録された.今回の報告からは,治療手技,標的部位,有害事象の分類がさらに細分化され,情報量が増加している.Table 1~5に分割して呈示する.

Table 1 Overview of annual interventional and ablation cases from the JPIC-DB during 2016
Table 2 Analysis of the non-ablation (non-EP interventional) cases
Table 3 Analysis of the ablation cases
Table 4 Summary of the mortality cases
Table 5 List of institutions which enrolled the actual cases during 2016
2016年症例登録施設(計89施設)(JPIC-DB開設 計100施設)
北海道立子ども総合医療・療育センター小児循環器内科名古屋第二赤十字病院小児科
北海道大学病院小児科名古屋市立大学病院小児科
旭川医科大学病院小児科独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院小児循環器科
弘前大学医学部附属病院小児科あいち小児保健医療総合センター循環器科
岩手医科大学附属病院循環器小児科三重大学医学部附属病院小児科
秋田大学医学部附属病院小児科滋賀医科大学医学部附属病院小児科
山形大学医学部附属病院小児科京都府立医科大学附属病院小児循環器・腎臓科
福島県立医科大学附属病院小児科京都大学医学部附属病院小児科
茨城県立こども病院小児循環器科大阪母子医療センター小児循環器科
筑波大学附属病院小児科大阪医科大学附属病院小児科
自治医科大学附属病院小児科関西医科大学附属病院小児科 小児循環器科
群馬県立小児医療センター心臓先天性公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院小児循環器科
埼玉医科大学総合医療センター小児循環器科近畿大学医学部附属病院小児科
埼玉県立小児医療センター循環器科大阪市立総合医療センター小児循環器内科・小児不整脈科
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科国立循環器病研究センター小児循環器科
千葉県こども病院循環器内科大阪大学医学部附属病院小児科循環器
千葉県循環器病センター小児科兵庫県立こども病院循環器内科
国保松戸市立病院小児科兵庫県立尼崎総合医療センター小児循環器内科
東京慈恵会医科大学附属病院小児科奈良県立医科大学附属病院小児科
東京女子医科大学病院循環器小児科和歌山県立医科大学附属病院小児科
慶應義塾大学病院小児科鳥取大学医学部附属病院小児科
順天堂大学医学部附属順天堂医院小児科・思春期科倉敷中央病院小児科
東邦大学医療センター大森病院小児科岡山大学病院小児循環器科
日本赤十字社医療センター小児科広島市立広島市民病院循環器小児科
日本大学医学部附属 板橋病院小児科あかね会土谷総合病院小児科
榊原記念病院小児循環器科山口県済生会下関総合病院小児科
東京都立小児総合医療センター循環器科山口大学医学部附属病院小児科
国立成育医療研究センター循環器科徳島大学病院小児循環器科
東京大学医学部附属病院小児科 循環器班愛媛大学医学部附属病院小児科
横浜市立大学附属病院小児循環器高知大学医学部附属病院小児科(小児循環器)
北里大学病院小児科福岡市立こども病院小児科(循環器)
昭和大学横浜市北部病院小児循環器センター久留米大学病院小児科
聖マリアンナ医科大学病院小児科聖マリア病院小児循環器内科
神奈川県立こども医療センター循環器内科独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院小児科
新潟市民病院小児科九州大学病院小児科
新潟大学医歯学総合病院小児科熊本市立熊本市民病院小児循環器内科
富山大学附属病院小児科宮崎大学医学部附属病院小児科
金沢大学附属病院小児科県立宮崎病院小児科
福井循環器病院小児科鹿児島大学病院小児科
山梨大学医学部附属病院小児科・新生児集中治療部沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児循環器科
長野県立こども病院循環器小児科四国こどもとおとなの医療センター小児循環器内科
岐阜県総合医療センター小児循環器内科名古屋第一赤十字病院小児科
大垣市民病院第二小児科(小児循環器新生児科)宮城県立こども病院循環器科
静岡県立こども病院循環器科島根大学医学部附属病院小児科
聖隷浜松病院小児循環器科

厳密なカウント方法として,「件数」は複数治療手技が施行された場合を含めた延べ数,「セッション数」は複数手技が施行された場合を一括とした治療件数,「例数」は年間に複数セッションが行われた場合に同一症例を一括とした症例数,と定義している.

結果

2016年の1年間に,4380件(4141セッション,4066例)の治療手技(件数,症例数)が登録された.4141セッションのうち,200セッション以上に複数インターベンションが行われたことになる.例えば,バルーン拡張術での左右肺動脈などの標的部位の違い,塞栓術と拡張術の同時施行,留置術直後の脱落に引き続く回収術などが複数インターベンションに含まれる.4380件中,非アブレーションは3993件(3687例),アブレーションは387件(379例)であり,2015年と比べほぼ横ばいの推移であった(Table 1).

Table 2では,非アブレーション,Table 3ではアブレーション,それぞれにおける手技別,標的部位別の件数を示す.併せて,有害事象,死亡,年齢分布,未完了件数,使用器具について解析している.手技の「完了」・「未完了」については,標的部位でのバルーン・ステント拡大,デバイスの固定等,手技的完了の有無で定義され,必ずしも有効,成功を意味しない.また,有害事象については循環動態や全身状態への有意な影響をもたらすレベルの事象を定義している.厳密な定義づけはデータ収集において非常に重要であり,JPICホームページに掲載されている入力マニュアルやJPIC-DBの総説1)に記載され,データ入力画面でも入力支援として明示されている.

合併症率(対件数)は,4.1%(非アブレーション4.3%,アブレーション3.4%)であった.重篤な有害事象として死亡が10件登録され,いずれも非アブレーションに認められた.その内訳をTable 4に示す.有害事象,死亡発生件数は,概ね2015年と同等であった.

考察

今回の報告からは,従来のアンケート集計の様式とは一線を画し,基礎疾患診断名(fundamental diagnosis)と既往手術手技名は,STS(the Society of Thoracic Surgeons)データベースとJCCVSD(日本先天性心臓血管外科データベース)に共通の分類にもとづき,治療手技,標的部位,合併症については国際的に共有可能な用語にもとづき細分化されている.これまで以上に患者および家族への説明や,合併症へのリスク管理,臨床研究,新規医療機器および技術導入に活かせるものと考えられる.また,従来のJPICホームページヘの掲載から,Journal of JPICへの掲載に変更となり,データを学会発表や論文で引用する際には出典を銘記できるようになった.死亡例を含む重篤な合併症については,従来アンケート集計では,詳細な発生状況の記載がなされ,各施設においてリスク管理のうえで貴重な情報源になっていたものと思われる.しかし,JPIC-DBでは階層選択の入力形式をとっているため,実際の発生状況がわかりにくい.特にTable 4の死亡例については,合併症分類が“Other”で,必要とした治療が“None”もしくは“Non-invasive”であった6例については,因果関係が表現されていない.選択肢が完全に網羅的でなかったか,あるいは入力が的確でなかったことが原因と考えられ,今後の検討課題である.

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