Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JPIC 1(2): 59-64 (2016)
doi:10.20599/jjpic.1.59

原著Original Article

先天性心疾患術後早期に行った心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションCardiac Catheterization and Intervention in the Early Postoperative Period after Congenital Heart Surgery

1埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科Department of Pediatric Cardiology, Saitama Medical University International Medical Center ◇ Satiama, Japan

2慶應義塾大学医学部小児科Department of Pediatrics (Division of Pediatric Cardiology), Keio University, School of Medicine

3埼玉医科大学国際医療センター小児心臓外科Department of Pediatric Pediatric Cardiac Surgery Cardiology, Saitama Medical University International Medical Center ◇ Satiama, Japan

受付日:2016年11月1日Received: November 1, 2016
受理日:2016年12月9日Accepted: December 9, 2016
発行日:2016年12月31日Published: December 31, 2016
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背景:先天性心疾患開心術後の残存病変に対する早期診断・介入のために,当院では術後早期の心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを積極的に行っているが,安全性と有用性について検討した報告は少ない.

方法:当院において2012年1月から2016年1月に先天性心疾患術後30日以内に行われたカテーテル30件を対象とし後方視的検討を行った.

結果:対象30件のうち,6件が診断カテーテル検査,24件がカテーテルインターベンションだった.術後日数は中央値13.5日,ECMO下での実施は5例であった.血管拡張術は11例に行なわれ10例(83%)に有効であり,ステント留置術は10例に施行され,7例(78%)に有効であった.診断カテーテル検査も病態の把握に有効であった.合併症は再灌流障害に伴う肺出血を来した1例のみであった.

結論:術後早期の心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションは安全に実施され,予後を有意に改善させる.

Background: Cardiac catheterization is often performed to evaluate the early postoperative hemodynamic status and also to treat residual anatomic defects.

Methods: We retrospectively evaluated 30 cardiac catheterizations performed within 30 days after surgery between January 2012 and January 2016.

Results: Cardiac catheterizations were performed to evaluate the hemodynamic status in 6 patients and for intervention of residual cardiac diseases in 24 patients. The median number of postoperative days was 13.5 days, and catheterization was performed on extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) in 5 patients. Dilation angioplasty was performed in 11 patients and was effective in 10 (83%). Stent implantations were performed in 10 patients and were successful in 7 (78%). Diagnostic catheterization was also effective for an early diagnosis of the hemodynamic status. A complication was noted in 1 patient with pulmonary bleeding due to a reperfusion injury.

Conclusion: Cardiac catheterization and catheter intervention in the early postoperative period can be safely performed, and can significantly improve the mortality and morbidity.

Key words: cardiac catheterization; catheter intervention; early postoperative period; congenital heart surgery

はじめに

先天性心疾患児における心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションの安全性は一般的に確立しているが1, 2),術後早期は縫合離開や患者移動などリスクが高いと考えられてきた.一方で,先天性心疾患開心術後の狭窄病変などの残存は術後管理を難渋させる.残存病変に対する早期診断および早期介入のために,心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを術後早期に実施する必要がある.当院では術後早期の心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを積極的に行っているが,安全性と有用性について検討した報告は少ない.

目的

先天性心疾患術後早期の心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションの安全性と有効性について検証する.術後早期であっても安全に実施できるか,そしてmortalityおよびmorbidityを改善させるかについて検証する.

対象と方法

当院において2012年1月から2016年1月に先天性心疾患術後30日以内に行われた心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを対象とし,後方視的に検討した.年齢,体重,基礎疾患,実施した手術について術後日数,術後残存病変,カテーテルインターベンションの種類,合併症,1年生存率について検討を行った.

心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションは全て全身麻酔下でカテーテル検査室にて行われた.ECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)が離脱できない場合,ECMO下でカテーテル検査室に移動し,心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを行った.カテーテルインターベンションとしては,バルーン拡張術,ステント留置術,コイル塞栓術,バルーン心房中隔裂開術(BAS: Balloon Atrial Septostomy)が行われた.カテーテルインターベンションにより,再手術回避,ECMO離脱,退院,次のstageへの到達が達成された場合,有効と判断した.

統計学的検討では,平均値の差の検討にはt検定を,割合の比較にはカイ2乗検定を用いた.1年生存率の解析にはKaplan–Meier法を用いた.統計学的有意差はp<0.05とした.統計処理にはJMP® 12(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を使用した.

結果

当院で行われた開心術535例のうち,術後30日以内の心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンション合計30件が27例の患者に対して行われた.30件のうち,6件が診断カテーテル検査,24件がカテーテルインターベンションだった.手術時の年齢は日齢14~1歳6か月(中央値3か月),体重は2.6~9.5 kg(中央値4.0 kg),術後日数は1~30日(中央値13.5日)だった.ECMO下での実施は5例(20%)であり,診断カテーテル検査が2例,カテーテルインターベンションが3例だった.患者の特徴,基礎疾患,手術についてTable 1, 2にまとめた.カテーテルの適応は,チアノーゼが9例,低心拍出量が7例,ECMO離脱困難が5例,心エコー検査で術後残存病変の疑いが7例だった.

Table 1 Patient characterisics.
Total (N=27)Diagnostic (N=6)Intervention (N=21)p Value
Age (months)3.0 (0.47–18)6.0 (0.5–12)2.6 (0.47–18)0.57
Body weight (kg)4.0 (2.6–9.5)5.0 (3.2–7.5)4.0 (2.6–9.5)0.30
Time from surgery (days)14 (1–30)6.5 (1–30)14 (2–30)0.28
ECMO5230.30
Data are median (range) or number.
Table 2 Primary diagnosis and surgical procedures.
DiagnosisSurgeryDiagnostic (N=6)Intervention (N=21)Total (N=27)
HLHSHybrid stage 1 (bilateral PAB+PDA stent)33
HLHSNorwood325
HLHSNorwood+BDG145
HLHSBDG11
Single ventricleBTS66
Single ventricle+TAPVRBDG+TAPVR repair11
Single ventricleFontan11
TGAArterial switch123
TOFRVOTR+VSD closure112
HLHS: hypoplastic left heart syndrome, TAPVR: total anomalous pulmonary venous return, TGA: transposition of great arteries, TOF: tetralogy of Fallot, PAB: pulmonary artery banding, PDA: patent ductus arteriosus, BDG: bidirectional Glenn, BTS: Blalock Taussig shunt, RVOTR: right ventricular outflow tract reconstruction, VSD: ventricular septal defect.

24件のカテーテルインターベンションが21例の患者に行われた.バルーン拡張術が11件,ステント留置術が10件,コイル塞栓術が1件,BASが2件行われ,術後病変は肺動脈狭窄13件,BT(Blalock-Taussig)シャント狭窄3件,グレン吻合部(上大静脈・肺動脈吻合部)狭窄1件,肺静脈狭窄1件,大動脈再狭窄2件,大動脈解離1件,体肺側副血管1件,心房間交通狭小化2件だった(Table 3).7件は術後1週間以内に行われた.

Table 3 Type of procedure.
Procedure typesLocationn
Balloon dilation angioplasty (N=11)Pulmonary artery7
BTS2
Aortic arch2
Stent implantation (N=10)Pulmonary artery6
BTS1
Pulmonary vein1
Systemic vein1
Aortic dissection1
Occlusion (N=1)APCA1
BAS (N=2)Restrictive PFO2
BAS: balloon atrial septostomy, BTS: Blalock Taussig shunt, APC: aortopulmonary collateral artery, PFO: patent foramen ovale.

術後1週間以内に行われたステント留置のうち3例をFig. 1–3に示す.1例目は左心低形成症候群に対してNorwood+両方向性グレン手術を実施した症例.術後チアノーゼが持続し,人工呼吸器からの離脱が困難だった.術後4日目に心臓カテーテル検査を行い,左肺動脈狭窄を認め,Express SD 5 mm 19 mmによるステント留置術を行った.ステント留置によりチアノーゼが改善し,人工呼吸器からの離脱も可能となった.2例目は単心室,BTシャント術後.術後チアノーゼのため循環が安定せず,術後5日目に心臓カテーテル検査でシャント狭窄を認めた.Sterling 4 mm 2 cmによりバルーン拡張術を行ったが,recoilを認めたため,Integrity BMS 4 mm 12 mmによりステント留置術を行った.ステント留置によりチアノーゼは著明に改善した.3例目は単心室,総肺静脈還流異常症に対して両方向性グレン手術+総肺静脈還流異常修復手術を実施した症例.術後循環不全を認め,人工呼吸器からの離脱が困難だった.術後6日目に心臓カテーテル検査で肺静脈・心房吻合部に狭窄を認め,Express 7 mm 17 mmによるステント留置を行った.ステント留置により循環は速やかに改善し,人工呼吸器からの離脱が可能となった.

Journal of JPIC 1(2): 59-64 (2016)

Fig. 1 Stent implantation for left Pulmonary artery stenosis

This patient had HLHS post Norwood and BDG operation. (A) Left pulmonary artery stenosis was detected. (B) Stent implantation was performed with Express SD 5 mm (diameter)×19 mm (length) stent on postoperative day 4.

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Fig. 2 Stent implantation for BTS stenosis

This patient had a single ventricle post BTS. (A) BTS Stenosis was detected after balloon dilation by Sterling 4 mm×2 cm. (B) Integrity BMS 4 mm×12 mm was implanted for BTS on postoperative day 5. (C) 3DCT post stent implantation.

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Fig. 3 Stent implantation for Pulmonary vein stenosis

This patient had single ventricle, TAPVR post BDG and TAPVR repair operation. (A) Pulmonary vein stenosis was detected. (B) Express 7 mm×17 mm was implanted on postoperative day 6.

合併症は,肺動脈閉塞に対してステント留置後に再灌流障害(reperfusion injury)による肺出血を来した1例のみだった.その他,カテーテルに関連する合併症は認めなかった.

カテーテルインターベンションにより,再手術回避,ECMO離脱,退院,次のstageへの到達が達成され有効と判断されたのは19件(79%)で,そのうちバルーン拡張術が10件(83%),ステント留置術が7件(78%),コイル塞栓術が1件(100%),BASが1件(50%)だった.形態に異常がなく診断カテーテル検査のみが行われた6例はいずれも病態の把握に有効であった.

1年生存率は,全体で27例中19例(70%),診断カテーテル検査群で6例中2例(33%),カテーテルインターベンション群で21例中17例(81%)であり,診断カテーテル検査群で有意に低かった(p=0.01)(Table 4).

Table 4 One-year survival.
Kaplan–Meier survival curve demonstrates survival difference between patients who underwent diagnostic catheterizations and patients who underwent interventions. Patients who only underwent diagnostic catheterization had a poor one-year survival rate.

考察

先天性心疾患術後患者の多くは,形態異常の修復に伴って血行動態が改善する.一方で,姑息手術後や術後に病変が残存する場合は,血行動態が正常化していないため循環不全をきたす.術後狭窄病変や人工心肺による心筋障害の残存は,心疾患術後管理を難渋させる原因となる3).循環不全やチアノーゼが持続し,ECMOや人工呼吸器からの離脱が困難など術後管理に難渋する場合,早期に心臓カテーテル検査を行うことで術後残存病変が検出でき,有効な治療を迅速に行える可能性がある.末梢性肺動脈狭窄,シャント狭窄,人工導管狭窄,大動脈再狭窄など多くの残存病変に対する術後早期の治療として,再手術ではなくカテーテルインターベンションが重要な役割を担うようになってきている.しかし,重症患者をカテーテル検査室に移動するリスクや手術時の縫合が離開するリスクを伴うため,術後早期のカテーテルインターベンションはchallengingな手技であると考えられてきた4)

先天性心疾患術後早期に行われた心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションの有効性や安全性に関する文献的報告は限られている4–7).Zahn6)らは,先天性心疾患術後6週間以内に心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを行った小児62例について検討を行い,術後48時間以内にカテーテルインターベンションを行った19例,直近の手術で作成した縫合線に対してバルーン拡張術・ステント留置術を行った26例,ECMO下で心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを行った9例を含めて合併症を認めず,安全にかつ有効に手技が行われたと報告している.直近ではNicholson8)らが,先天性心疾患術後30日以内に心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを行った小児193例について2014年に検討しており,全症例の3分の2が術後12日以内であり,新しい縫合線に対してバルーン拡張術・ステント留置術を行った45例を含めて,術後早期のカテーテルは早期診断・早期介入に有効であり,かつ安全に実施できると報告している.

我々の研究では,術後30日以内に行われた心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションを対象としたが,全30件のうち11件(39%)が術後7日以内に行われており,これまでの報告と比較してより術後急性期に行われたカテーテルが多く含まれている.術後急性期であってもカテーテルは安全に実施された.ECMO下で実施したカテーテルは安全に実施され,カテーテル関連死亡を認めず,カテーテルインターベンションも有効だった.

基礎疾患は左心低形成症候群と単心室が多く,先行する手術はNorwood型手術,BTシャント手術が多かった.術後残存病変は末梢性肺動脈狭窄やBTシャント狭窄が多かった.Norwood手術後の肺動脈狭窄は,先行する両側肺動脈絞扼術の影響や大動脈からの圧迫が原因として考えられ,再手術は十分な拡張が得られない可能性がある上にリスクが高く,バルーン拡張術もrecoilの可能性があるため,ステント留置術の良い適応と考えられる.ステント留置術は,バルーン拡張後にrecoilを来たす狭窄病変や閉塞病変に対して有効であるが,術後早期にステント留置を行った場合,次回手術での除去やステント内再狭窄に対する再拡張などの再介入が必要になる.術後早期のステント留置は再介入を前提としたbridging therapyとして非常に優れた治療戦略であると考える.ステント留置だけでなく,バルーン拡張,コイル塞栓,BASを含めて,カテーテルインターベンションは約80%が有効と判断され,mortalityおよびmorbidityを改善する可能性がある.また,診断カテーテル検査は残存病変の早期診断や病態の把握に有効であった.

1年生存率は全体で73%だったが,術後早期にカテーテルを必要とする患者は非常に重症であり予後不良であることを反映していると思われる.また,1年生存率はカテーテルインターベンション群と比較して診断カテーテル検査群で有意に低かった.術後病変が狭窄などの形態異常の場合はカテーテルインターベンションで改善できるが,形態異常を認めない場合はカテーテルインターベンションの適応はなく内科的治療のみでは効果は限定的であるという可能性を示唆していると考えられる.術後早期に残存病変を診断し,早急にカテーテルインターベンションを行うことが重要である.

結論

術後早期の心臓カテーテル検査およびカテーテルインターベンションは安全に実施され,診断カテーテル検査は術後残存病変の早期診断に有効だった.術後早期のテーテルインターベンションはmortalityおよびmorbidityを有意に改善させる.

利益相反

日本Pediatric Interventional Cardiology学会の定める利益相反に関する開示事項はありません.

本内容は第27回日本Pediatric Intervention Cardiology学術集会で2016年1月30日に発表した.

引用文献References

1) Vitiello R, McCrindle BW, Nykanen D, et al: Complications associated with pediatric cardiac catheterization. J Am Coll Cardiol 1998; 32: 433–440

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3) Pagowska-Klimek I, Pychynska M, Krajewski W, et al: Predictors of long intensive care unit stay following cardiac surgery in children. Eur J Cardiothorac Surg 2011; 40: 170–184

4) Rosales AM, Lock JE, Perry SB, et al: Interventional catheterization management of perioperative peripheral pulmonary stenosis: Balloon angioplasty or endovascular stenting. Catheter Cardiovasc Interv 2002; 56: 272–277

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8) Nicholson GT, Kim DW, Vincent RN, et al: Cardiac catheterization in the early post-operative period after congenital cardiac surgery. JACC Cardiovasc Interv 2014; 7: 1437–1443

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