Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JCIC 8(1): 5-9 (2023)
doi:10.20599/jjcic.8.5

原著原著

GORE® CARDIOFORM ASD Occluderを用いた心房中隔欠損閉鎖術の短期成績Short-term Results after ASD Closure Using Gore® Cardioform ASD Occluder

榊原記念病院 小児循環器科Depertment of Pediatric Cardiology, Sakakibara Heart Institute

受付日:2023年5月8日Received: May 8, 2023
受理日:2023年9月7日Accepted: September 7, 2023
発行日:2023年9月30日Published: September 30, 2023
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【背景】Gore® Cardioform ASD occluder(以下GCA)は心房壁への圧迫の緩和が期待できる閉鎖栓で,従来の閉鎖栓では留置が困難なリム欠損症例や中隔のMalalignment症例に対しても治療可能な閉鎖栓として注目されている.GCA治療後の短期予後を文献的考察を加え検討した.

【方法】対象は2021年10月から2022年8月にGCA適応基準を満たした二次孔型心房中隔欠損23例で,治療前後の経胸壁,経食道心エコー図,レントゲン画像結果,臨床症状を後方視的に検討した.

【結果】実施年齢の中央値は58歳,Qp/Qsの中央値は1.6, Septal malalignment症例は1例(4.3%),大動脈側リム欠損症例は9例(39%)に認めたが,留置後,閉鎖栓の脱落,Erosion, 有意な遺残短絡を呈する症例はなかった.不整脈は7例(30%)に認め,1例はアブレーション治療を要したが再燃なく経過した.Wire frame fractureは4例(17.4%)に認めたが臨床的な問題を起こさず経過した.

【結語】治療後に重大な合併症は認めず,GCAはリム欠損症例やSeptal malalignment症例に対しても安全に使用できる閉鎖栓と考える.

【Background】Gore® Cardioform ASD occluder (GCA) is a type of occluder that is expected to reduce the atrial wall compression, and hence has been considered to be useful for patients with rim defects and atrial septal malalignment. We here analyzed the short-term results of patients after closure of the atrial septum using GCA, together with a literature review.

【Methods】A total of 23 patients with ostium secundum ASD who fulfilled the applicability criteria for GCA between October 2021 and August 2022. Findings of transthoracic/transesophageal echocardiography and chest X-ray, and clinical symptoms were analyzed retrospectively.

【Results】The median age of the patients at the time of treatment was 58 years. The mean value of Qp/Qs was 1.6. One patient (4.3%) had malalignment of the atrial septum. Nine patients had a rim defect on the aortic side; however, there were no patients in whom the occluder became degraded, who had erosion, or a residual shunt after placement of a GCA for atrial septum. Seven patients (30%) developed arrhythmia, and 1 of the 7 patients required catheter ablation. None of the patients showed relapse of arrhythmia. Wire frame fracture occurred in 4 patients (17.4%), but this did not result in any clinical problems.

【Conclusion】We considered that GCA is a safe occluder that can be used in patients with rim defects and malalignment of the atrial septum, which does not cause any serious complications after closure of the atrial septum.

Key words: Gore® Cardioform ASD Occluder; ASD secundum; wire frame fracture; arrhythmia; erosion

緒言

心房中隔欠損(以下ASD)は,先天性心疾患のうち約10%を占める.成人期を迎えるASD未治療症例においては肺高血圧を合併することがあるため,治療時期においては十分検討する必要がある1).Gore® Cardioform ASD occluder(以下GCA)は,ニチノールワイヤーフレームの上に血栓耐性延伸ポリテトラフルオロエチレン(以下ePTFE)素材で構成され,壁の損傷を最小限に抑え組織の内膜増殖を短期間で実現させる閉鎖栓である2).GCAは1)欠損孔が35 mmを超えない,2)欠損縁から冠状静脈洞,房室弁及び右上肺静脈の距離が5 mm以上,3)Qp/Qs>1.5,4)右室の拡大を認める,5)臨床症状を有する〔3)–5)に関してはいずれかの条件を満たす場合〕に適応される.さらに,大動脈側リムの欠損症例や一次中隔と二次中隔のmalalignmentが強い症例など心組織侵食のリスクが懸念され従来のデバイスでは留置困難な症例においても,安全に留置できる可能性がある3).本邦では2021年8月より二次孔型ASDに対する閉鎖栓として導入され,当院では2021年10月より使用を開始した.今回我々はGCAでの心房中隔欠損閉鎖後の短期予後を,文献的考察を加え検討した.

対象と方法

対象は2021年10月から2022年8月の期間内に,GCAの適応基準を満たした二次孔型ASDの23例とした.治療前日よりバイアスピリンの内服を開始し,留置後6か月間内服した.治療前に経胸壁心臓超音波検査(以下TTE)で,欠損孔の径,数,シャントの向き,Qp/Qs,右室右房間圧較差(Tricuspid regurgitation pressure gradient; TRPG),右室拡張末期容積(Right ventricle end-diastolic volume; RVEDV)を確認した.治療は麻酔科医による全身麻酔,人工呼吸管理下で行ない,経食道エコー(以下TEE)で欠損孔の径,数,シャントの向き,Septal malalignmentの有無,リムの評価,そして部分肺静脈還流異常の有無に関して再度確認を行なった.閉鎖栓のサイズは27, 32, 37, 44, 48 mmの5種類で,閉鎖栓のサイズの決定は,サイジングバルーンで欠損孔の計測を行ない,GCAのサイジングチャートに基づいて決定した.GCAのデリバリーシステムを使用し治療部位に閉鎖栓を進め,透視下,及びTEE監視下に閉鎖栓を留置した.留置後に周囲組織との接触状況,閉鎖栓の形態,ペタルの存在部位,遺残短絡などを確認し治療を終了とした.治療後は心電図モニターを継続し,治療後1, 3日に胸部レントゲンを撮像しWire frame fracture(以下WFF)の有無,治療後3日にTTEで治療後の閉鎖栓の位置と形態,遺残短絡,周辺構造への影響の評価,心収縮能,TRPG, RVEDVを確認し,治療後4日に退院とした.退院後の経過観察は,治療後1, 3, 6, 12か月,それ以降は1年毎に経胸壁心臓超音波検査,胸部レントゲン,心電図を確認し,必要に応じて診察日を追加した.

本研究では,治療を要した23例の臨床背景,治療後の合併症において病歴より後方視的に情報収集をした.また治療後の合併症において,発症要因に関して統計学的に検討を行なった.統計解析においてはU検定を用い,p値が0.05未満を有意差があると判定した.

結果

全例洞調律下で治療を実施した.2022年8月時点での治療後の観察期間は中央値で9か月であった.治療実施年齢の中央値は58歳(6–79歳),性別は男性12例(53%),女性11例(47%),基礎疾患に関しては1例(4.3%)にDown症候群を認めた.心房中隔に2個の欠損孔を持つ多孔症例は2例(8.7%),Septal malalignment症例は1例(4.3%),大動脈側リム欠損症例は9例(39%),上方リム欠損症例は1例(4.3%)であった.TTE, TEEにおける欠損孔サイズ(最大径×最小径)の中央値はそれぞれ15 mm(5.7–24)×14 mm(5.6–22),13.2 mm(4.5–22.5)×9.5 mm(3.7–18),Qp/Qsの中央値1.6(1.1–2.5)であった(Table 1).肺高血圧は2例(8.7%)に認め,肺動脈平均圧はそれぞれ26, 30 mmHgであった.サイジングバルーン径に応じてメーカーが推奨している閉鎖栓よりサイズアップを要した症例は6例(26%)であった.サイズアップはリム欠損症例,Malalignment症例,欠損孔が楕円形の強い症例,多孔症例,留置後のleakが多い症例に対して行なっていた.治療中の有害事象はなく,全例閉鎖栓を留置できた.また留置後の閉鎖栓の脱落,有意な遺残短絡,Erosion症例はなかった.治療前後のTTE所見において,全症例で右室拡張期末期容積は縮小していた.RVEDVを体表面積で除した右室拡張末期容積係数(RVEDVI)の治療前後の中央値において,治療前は172 mL/m2(113–231)に対して,治療後は126 mL/m2(88–169)であった.TRPGの中央値において,治療前25 mmHg(11–49)に対して,治療後19 mmHg(8–41)であった.Qp/Qs, TRPG, RVEDVIの各種循環のパラメーターの統計解析を行い,治療前後でQp/Qs, RVEDVIには有意差は認めなかったが,TRPGに有意差を認めた.閉鎖栓留置後の合併症は,発熱が5例(22%),頭痛が1例(4.3%)で,全例治療翌日に出現したが,退院前には自然消退し,以降出現することはなく経過した.新規不整脈は7例(30%)に認め,内訳は心房細動が6例,心房頻拍が1例で,心房細動6例に関しては治療後10日以内に発症し,うち3例は自然に,2例はシベンゾリンコハク酸を使用して,1例は電気的除細動で洞調律に復帰し,その後は再燃なく経過した(Table 2).心房頻拍の1例に関しては,治療後270日の時点で出現しアブレーション治療を要した.三尖弁の1–2時方向を最早期興奮部位の心房頻拍で,閉鎖栓のペタルに接する部位と一致していた.アブレーション治療後の頻拍発作再燃はなかった.本研究では新規不整脈の発症が30%と多かったため,不整脈の発生要因を検討するため,治療後に不整脈を起こした群をGroup A,不整脈を起こさなかった群をGroup Bとし,年齢,性別,欠損孔の最大径,閉鎖栓のサイズ,サイズアップの有無,WFFの有無に関して比較検討を行なった.年齢においてGroup Aの中央値は62歳(13–79),Group Bの中央値は32歳(6–77),両群間で有意差は認めなかった.欠損孔の最大径において,Group Aの中央値は16 mm(5.7–24),Group Bの中央値は12 mm(6.5–21),両群間で有意差はなかった.心房圧の上昇,心房壁のストレッチが不整脈の要因と考えられている内容に対して,本研究で両群における治療前のQp/Qs, TRPG, RVEDVI値を比較検討したが,各種パラメーターにおいて有意差はなかった.閉鎖栓のサイズ,サイズアップの有無,WFFに有無においても両群間で比較を行なったが,いずれも有意差はなかった(Table 3).

Table 1 Clinical characteristics and findings of echocardiogram.
n=23
Age (y)58 (6–79)
Sex (male/female)12(52.2%)/11 (47.8%)
Underlying disease1 (4.3%); Trisomy 21
Medical history
Heart failure0 (0.0%)
Arrhythmia0 (0.0%)
Multiple defects2 (8.7%)
Septal malalignment1 (4.3%)
Rim defect
Valsalva rim defect9 (39.1%)
Superior rim defect1 (4.3%)
ASD size (mm)
TTE15 (5.7–24)×14 (5.6–22)
TEE13.2 (4.5–22.5)×9.5 (3.7–18)
Qp/Qs1.6 (1.1–2.5)
Pulmonary hypertension2 (8.7%)
Mean pulmonary artery pressure (mmHg)28 (26–30)
Data are presented as median (range). Data of ASD diameter; maximum value (left), minimum value (right). TEE, transesophageal echocardiography; TTE, transthoracic echocardiography; Qp/Qs, pulmonary blood flow-to-systemic blood flow
Table 2 Complication
n=23
Headache1 (4.3%)
Fever5 (21.7%)
Arrhythmia
Atrial fibrillation6 (26.1%)
Atrial tachycardia1 (4.3%)
Wire frame fracture4 (17.4%)
Device/Sizing balloon size ratio2.44 (1.97–2.73)
Data are presented as median (range).
Table 3 Comparison of age, sex, maximum ASD size, hemodynamics parameters before ASD closure between two groups
Group A (n=7)Group B (n=16)p-value
Age (y)62 (13–79)32 (6–77)0.17
SexM (3)/F (4)M (9)/F (7)0.55
Maximum ASD size (mm)16 (5.7–24.0)12 (6.5–21.0)0.37
Qp/Qs1.6 (1.1–2.0)1.5 (1.0–2.5)0.54
TRPG (mmHg)25 (11–45)24 (14–49)0.94
RVEDVI (mL/m2)162 (113–174)176 (135–231)0.095
WFF0 (0.0%)4 (25%)0.14
Sizing up of device1 (14.3%)5 (31.3%)0.39
Device diameter (mm)37 (27–48)32 (27–48)0.84
Data are presented as median (range). Qp/Qs, pulmonary blood flow-to-systemic blood flow; TRPG, transtricuspid pressure gradient; RVEDVI, right ventricular end-diastolic value index. Statistical significance was set at P<0.05.

WFFは4例(17.4%)に認められ,選択された閉鎖栓の径は32 mmが1例,44 mmが2例,48 mmが1例と大きかった.そのうち2例は多孔症例で意図的に大きいサイズの閉鎖栓を選択していた.WFFは,4例中2例は治療後1か月,2例は治療後6か月に出現しており,出現時期以降の経過観察において臨床的な有害事象を認めなかった.

考察

二次孔型のASDに対するカテーテル治療において,現在本邦では3種類の閉鎖栓が使用されている.閉鎖栓留置後の重度な有害事象としてErosion,脱落があり,Erosionは0.1–0.3%,脱落は0.4%の発生率である3)が,出現すると重篤な転帰となる可能性がある.Erosionに関しては,GCA自体のワイヤーが柔軟性を持ち,その上を覆うePTFE素材が組織損傷を抑えるため起こしにくいと考えられている.当院において従来のdisk型デバイスによる治療後のErosion症例はない.過去の報告では出現頻度は0.1–0.3%で,本邦では0.15%と報告されているが死亡症例の報告はない3).Erosionの危険因子は,1)欠損孔に対してより大きな閉鎖栓を選択した場合,2)可動性の大きい心房中隔の存在,3)Septal malalignmentがある場合,4)大動脈側リムの欠損が挙げられているため,TEEによる欠損孔の評価で,危険因子を持つ症例に関しては留置後の経過観察も特に注意する必要がある3).23例のうち主として留置困難のため閉鎖栓のサイズアップを要した症例は6例(26%)で,選択した閉鎖栓は48 mmが3例,44 mmが2例,37 mmが1例と全症例で大きいサイズの閉鎖栓を使用した.Septal malalignment症例は1例(4.3%),大動脈側のリム欠損症例は9例(39%)であったが,全症例で治療中,治療後の経過でErosionなく経過している.従来のデバイスでの脱落に関しては,発生頻度は約0.4%と報告されており,脱落の好発時期は治療中から留置後24時間以内が多いとされている.ASDをもつ125症例を後方視的に検討したSommelらの報告で,留置後24時間以内に3例(2.4%)に脱落を認めたが死亡症例はなかった4).危険因子としてはリム欠損,特に後下方の欠損,Septal malalignment症例,大きい欠損孔が挙げられている3)が,23例のうち後下方のリム欠損症例はなく,Septal malalignmentは1例に認めるのみであった.しかし大動脈側のリム欠損症例は9例(39%)に認めたが,当院では脱落症例はなかった.Erosionや閉鎖栓の脱落の危険因子を持っていたとしても,適切な適応判定とサイズ選択によってGCAを用いて治療できる可能性があると考えられる.

上記に示した重度な事象の他に,合併症としては頭痛,発熱,不整脈,WFFが挙げられている.頭痛は1例(4.3%),発熱は5例(22%)に認め,全例治療翌日に出現したが,退院前までには自然消退し,その後は無症状で経過している.発熱に関して,AquinoらはCOVID19感染後,GCAでASD閉鎖後に閉鎖栓の血栓形成により発熱を認めた症例を報告している.閉鎖栓関連の血栓形成は約1%とされている5).RAディスクの展開後,Goretex膜に捕獲された血液は,急速にディスクを膨張させるため血栓形成の機会を増やすことが報告されている.Goretexはポリテトラフルオロエチレンを延伸加工したePTFEとポリウレタンポリマーを複合して製作された膜であるが,一方GCAはePTFEのみを親水加工した素材を使用しており,Goretex膜より摩擦抵抗が非常に少なく血栓形成が発生しにくいと報告されている5)

不整脈とWFFに関してはそれぞれ7例(30%),4例(17%)に認めた.ASD閉鎖後の新規心房性不整脈の報告において,Minらの報告では,427例のうち19例(4.4%),Ortegaらは100例のうち15例(15%),Miuraらは238例のうち13例(5.5%)と出現率にばらつきはあるが決して少なくない6–8).不整脈出現時期においては,閉鎖後6か月以内が好発との報告があり,当院においても6例(86%)は治療後10日以内に出現している.6例のうち3例(50%)は自然に,2例(33%)はシベンゾリンコハク酸を使用して,1例(17%)は電気的除細動で洞調律に復帰し,以降再燃していない.残り1例は,治療後270日の時点でアブレーション治療を要している.三尖弁1–2時方向を最早期とするFocalな心房頻拍で,組織の線維化が関与している可能性がある.Focusは閉鎖栓の周囲に存在しており閉鎖栓が関与している可能性が高いが,今回の検討では線維化を起こした機序に関しては明らかにはできなかった.しかし治療後において,時期をおいてアブレーションを要する心房頻拍が出現する可能性があることは念頭におく必要があるかもしれない.

不整脈の誘因として,1)治療年齢が40歳以上,2)心房拡張による心筋リモデリング,3)組織の線維化,4)後下方のリム欠損が挙げられている.原因の1つである後下方のリム欠損においては,当院での症例にはなかった.一方,Michelらは心房圧の上昇,そして心房壁のストレッチが要因と考察している7).Gatzoulisらは心房圧の上昇や心房壁のストレッチに,年齢や欠損孔の大きさが関連することを示している9).本研究において,治療後に不整脈を起こした群をGroup A,不整脈を起こさなかった群をGroup Bとし,年齢,性別,欠損孔の最大径,閉鎖栓のサイズ,サイズアップの有無,WFFの有無に関して比較検討を行なったが,いずれの要素も両群間で有意差はなかった.しかし,Group AにおいてGroup Bと比較し治療時年齢が高い傾向にあり,治療時期に関しては早めることはできたかもしれない.

WFFに関して,当院では4例(17.4%)に認めたが,WFFに起因するErosionなどの有害事象合併症例はない.好発時期は治療後6か月以内の報告が多く,Morganらの報告では40%,Robertらの報告では52%に出現している10).当院においては全例,治療後6か月以内に出現していた.危険因子としては閉鎖栓の径が大きい点が挙げられ,それに心収縮という物理的な力が加わることで発症すると考えられている.GarethらはWFFが起きやすい箇所においても研究し,閉鎖栓の左房ディスクの中心部に起きやすく,特に欠損孔の径に対してより大きな閉鎖栓を留置した場合ほど発症しやすいことを考察している10).実際WFFを起こした4例において,選択された閉鎖栓の径において32 mmが1例,44 mmが2例,48 mmが1例と使用した閉鎖栓は大きかった.しかしサイジングバルーンで計測した欠損孔の径に対する閉鎖栓の径の比に関しては,1.97, 2.25, 2.62, 2.73とばらつきがあり,たとえ比が小さくても起きる可能性はある.左房ディスクのうち特に起きやすい場所として前上方,次に前下方が多い点に着目したMorganらは,心房の形態,閉鎖栓にかかる力の方向に関連すると考察している.当院でWFFを起こした4例の胸部レントゲンにおいて,1例は正面のみのレントゲン撮像のためどちらのディスクでのFractureかは不明であったが,閉鎖栓の中央部で起きていた.残り3例は,全て左房ディスクの前上方でのFractureを起こしていた.左房ディスクの前方に起きやすい理由としては,拍動する大動脈が前方に存在して反復性の機械的な作用が加わることが要因と考えられている.閉鎖栓の中心部に多い理由としては,ニチノールワイヤーフレームの形態的な特徴上,心臓が収縮することで閉鎖栓の中心部に慢性的に強い張力がかかるためと考察している.このためサイジングバルーンで計測した径に対して選択すべき閉鎖栓より大きな閉鎖栓を使用した場合は,心房形態,そして閉鎖栓と周囲組織への接触状況の把握は特に重要であると考える.

結語

GCA治療後において,閉鎖栓の脱落やErosion症例はなかった.今回,大動脈側リム欠損症例,Septal malalignment症例,多孔症例に対して閉鎖栓を留置する際の有害事象はなく,治療後の経過も良好であった.治療後の短期イベントにおいて,不整脈出現率が比較的多く1例のみアブレーション治療を要したが,重大な有害事象の報告はなく,ASD閉鎖において安全に使用できる閉鎖栓と考える.また治療後の不整脈発症要因として,治療時年齢が関連している可能性があり,治療時期の設定に関して十分検討する必要があるかも知れない.

利益相反

日本小児循環器学会の定める利益相反に関する開示項目はありません.

本内容は第33回日本先天性心疾患インターベンション学会学術集会にて2023年1月20日に発表した.

引用文献References

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