Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JCIC 6(2): 17-28 (2022)
doi:10.20599/jjcic.6.17

Annual ReportAnnual Report

2019年における先天性心疾患,川崎病および頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計:~日本先天性心疾患インターベンション学会レジストリー(JCIC-Registry)からの年次報告Nationwide registry data of catheter interventions and ablations for congenital heart disease, Kawasaki disease, and tachyarrhythmias in Japan during 2019: Annual report from Japanese Congenital Interventional Cardiology Registry (JCIC-R)

1日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)調査委員会JCICレジストリーワーキンググループJCIC-Registry Working Group, Investigational Committee

2日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)理事会Executive Board of the Japanese Society of Congenital Interventional Cardiology (JCIC)

3静岡県立こども病院循環器科Department of Cardiology, Shizuoka Children’s Hospital ◇ Shizuoka, Japan

4東京大学医学部附属病院小児科Department of Pediatrics, Tokyo University Hospital ◇ Tokyo, Japan

5大阪母子医療センター小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Osaka Women’s and Children’s Medical Center ◇ Osaka, Japan

6国立循環器病研究センター小児循環器内科Department of Pediatric Cardiology, National Cerebral and Cardiovascular Center ◇ Osaka, Japan

7富山大学医学部小児科Department of Pediatrics, Faculty of Medicine, Toyama University ◇ Toyama, Japan

8昭和大学病院小児循環器・成人先天性心疾患センターPediatric Heart Disease and Adult Congenital Heart Disease Center, Showa University Hospital ◇ Tokyo, Japan

9岡山大学病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Okayama University Hospital ◇ Okayama, Japan

10九州大学病院小児科Department of Pediatrics, Kyushu University Hospital ◇ Okayama, Japan

11東京大学大学院医学系研究科医療品質学講座Department of Healthcare Quality Assessment Graduate School of Medicine, Tokyo University ◇ Tokyo, Japan

12東邦大学医療センター大橋病院循環器内科Division of Cardiovascular Medicine, Toho University Ohashi Medical Center ◇ Tokyo, Japan

13久留米大学医学部小児科学講座Department of Pediatrics, Kurume University School of medicine ◇ Kurume, Japan

14中京病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Chukyo Hospital ◇ Aichi, Japan

15聖隷浜松病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Seirei Hamamatsu General Hospital ◇ Hamamatsu, Japan

16榊原記念病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Sakakibara Heart Institute ◇ Tokyo, Japan

17埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科Department of Pediatric Cardiology, Saitama Medical University International Medical Center ◇ Saitama, Japan

*1

These authors equally contributed.

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一般社団法人日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)では,カテーテル治療の手技・件数・有害事象に関して,1993年からの全国アンケート集計にはじまり,2013年よりインターネットでの日本先天性心疾患インターベンション学会レジストリー(JCIC-R)の運用を開始している.本稿では,完全オンライン移行4年目の2019年の1年間における4,805セッションの集計について報告する.本レジストリーの特徴として,登録対象が小児期から成人期にかけての先天性心疾患のみならず,川崎病心血管後遺症や,正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈に対するアブレーションを含め,あらゆるカテーテル治療手技と有害事象を含めるという,一国家における包括的リアルワールドデータであることが挙げられる.ベンチマーキング,多施設共同研究のみならず,市販後調査を中心とする新規医療機器導入事業,申請と承認事業等,多方面で有効活用が始まっている.

The Japanese Society of Congenital Interventional Cardiology (JCIC) had conducted the annual questionnaire surveillance regarding catheter-based interventional procedures and adverse events since 1993. The internet registry system named JCIC-Registry (JCIC-R) went into operation with the initial enrollment of the actual cases since January 2013. In this report, we demonstrate annual 4,805 catheter-based therapeutic sessions during 2019, the fourth year after complete transition to online registration. The JCIC-R maintains specific feature of the nationwide comprehensive real-world registry involving any types of interventions and ablations for congenital heart disease, cardiovascular sequelae following Kawasaki disease, and tachyarrhythmias. In addition to benchmarking and multi-institutional research, we effectively utilize the registry in various fields, such as new device development with post-marketing surveillance, application and approval process.

Key words: catheter intervention; catheter ablation; database; registry; the Japanese Society of Congenital Interventional Cardiology (JCIC)

はじめに

2019年の1年間に日本先天性心疾患インターベンション学会レジストリー(JCIC-Registry; JCIC-R)に登録されたカテーテル治療手技と有害事象の集計を報告する.

対象および方法

一般社団法人日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)では,開設当初から,先天性心疾患のみならず川崎病心血管後遺症や頻拍性不整脈を含めた包括的なカテーテル治療の発展に取り組んでおり,近年では成人期に移行したカテーテル治療の領域も拡大してきた.JCIC-Rにおいても,以下のすべてのカテーテル治療手技と有害事象を包括的に対象としている.

  • 小児期から成人期にかけての先天性心疾患
  • 川崎病心血管後遺症
  • 正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈

2019年の1年間に,National Clinical Database(NCD)において全国107施設でJCIC-Rが開設され,そのうち92施設から実施されたカテーテル治療が登録された.2016年の登録からJCIC-Rへの登録に完全移行し,2016年,2017年,2018年の集計結果が本誌にannual reportとして掲載されている1–3).毎年,登録者からの指摘や,次々と本邦に導入される新しい治療手技に対応して登録システムを更新し,治療手技,標的部位,有害事象の分類が細分化されている.

また,厳密なカウント方法として,「件数」は複数治療手技が施行された場合を含めた延べ数,「セッション数」は複数手技が施行された場合を一括とした治療件数,「例数」は年間に複数セッションが行われた場合に同一症例を一括とした症例数と定義しており,今回の集計からは実質的なカテーテル治療の機会である「セッション数」を基本として示している.この際,「全体の集計数」と「個別の集計数の総和」は極めて近似するが,必ずしも一致しないことがあり得る.

JCIC-Rでは,主要手技を以下の11種類のカテゴリーに分類している;

  1. Septostomy(Rashkind or blade, except static BAS)
  2. Balloon Valvuloplasty(BVP)
  3. Balloon Dilation(BD)(including static BAS, except BVP, except stent-redil)
  4. Stent Implantation
  5. Stent Redilation
  6. Coil Embolization
  7. Device Closure
  8. Foreign Body Retrieval
  9. Thrombus aspiration/Thrombectomy
  10. PCI(percutaneous coronary intervention)
  11. Ablation(Radio-frequency ablation and/or cryoablation)

この中で,さらに標的部位や使用した治療器具により細分類していくことになる.

また前回の報告に引き続き,年齢層を小児科学および児童福祉法の分類に沿うように,日齢28以下,29日以上1歳未満,1歳以上3歳未満,3歳以上15歳未満,15歳以上20歳未満,20歳以上の6群に分類している.

有害事象(Adverse event; AE)については循環動態や全身状態への有意な影響をもたらすレベルの事象を定義している.厳密な定義づけはデータ収集において非常に重要であり,JCIC学会ホームページに掲載されている入力マニュアルや,JCIC-R(旧JPIC-DB)の総説4)に記載され,データ入力画面でも入力支援として明示されている.有害事象の中でも,重症度として,死亡,生命を脅かすもの,一過性であっても治療介入しなければ生命を脅かすもの,以上3つが重篤な有害事象(Severe adverse event; SAE)として計上される.

結果

2019年の1年間に,4,805セッション(5,123件,4,626例)の治療手技が登録された.4,805セッションのうち,300セッション以上に複数インターベンションが行われたことになる.例えば,バルーン拡張術での左右肺動脈などの標的部位の違い,塞栓術と拡張術の同時施行,留置術直後の脱落に引き続く回収術などが複数インターベンションに含まれる.4,805セッション中,非アブレーションのカテーテル治療は4427セッションで増加傾向,アブレーションは379セッションで減少傾向あった.全体として,過去4年(2016年4,141セッション,2017年4,487セッション,2018年4,574セッション)で増加傾向を示し,史上最多となった(Fig. 1, Table 1).

Journal of JCIC 6(2): 17-28 (2022)

Fig. 1 Annual changes of numbers of sessions since 2016. After 2016, all procedures and sessions are registered into the online JCIC-Registry

Table 1 Adverse event summary from JCIC-Registry during 2019

Table 2では,主要手技のうち,Foreign Body Retrieval, Thrombus aspiration/Thrombectomy, PCI(percutaneous coronary intervention)を除く8つのカテゴリーについて,セッション数とAE, SAE,死亡事例の発生状況を示す.AE発生率(対セッション数)は,4.3%(非アブレーション4.4%,アブレーション3.2%)であった.手技別に見ると例年140~160件施行されるstent implantationの有害事象発生率が依然として最も高く,10.8%となっていた.死亡事例が6セッションで登録され,その発生率は0.12%であった.

Table 2 Incidence of Adverse Events according to Major Procedural Categories from JCIC-Registry during 2019

Table 3に,Table 2で示した主要手技毎のAE発生状況をより詳細に示す.また,Fig. 2では,非アブレーションでのAEに着目し,その重症度と,心臓関連および非心臓関連のAEの発生状況について,詳細に示す.

Table 3 Detailed analysis of adverse events according to major procedural categories during 2019
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Fig. 2 Detailed analysis of adverse events (AEs) focusing on non-ablation catheter intervention in 2019. The adverse events are illustrated by their severity and impact. They are also classified into cardiac and non-cardiac ones

Table 4, 5では非アブレーション,アブレーション,それぞれにおける手技別,標的部位別の件数を示す.併せて,有害事象,死亡,年齢分布,使用器具について解析している.使用器具(バルーン,閉鎖栓,特殊カテーテル・シース等)については,導入された機器や手技の進歩に対応して,例年よりさらに細分化されている.

Table 4 Analysis of the non-ablation (non-EP intervention) procedures
Table 5 Analysis of the ablation procedures

死亡事例の詳細をTable 6に示す.有害事象,死亡発生件数は,例年から多少の増減はあるものの大きな変化はない.依然として半数以上は乳児期早期の重症心疾患に発生している.

Table 6 Summary of the mortality cases

考察

今回の報告で全国の4年間の小児期から成人期にかけての先天性心疾患,川崎病心血管後遺症,正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈に対するカテーテル治療手技と有害事象の包括的リアルワールドデータが蓄積されたことになる.JCIC-Rの当初からの構築デザインとして,ベンチマーキング(患者説明や自施設治療成績のための参照データ),リスク層別化研究,学術的な多施設共同研究,新規医療機器導入および認定事業等,多方面に有効活用されることを主眼としていた.そのため,基礎疾患診断名(fundamental diagnosis)と既往手術手技名は,STS(the Society of Thoracic Surgeons)データベースとJCVSD Congenital(日本先天性心臓血管外科データベース先天性部門)に共通の分類に基づいている.そして,治療手技,標的部位,合併症についても,国内外において行政や企業への情報共有が可能な専門用語にもとづき細分化されている.本領域の最新の知見に対応しながら,患者および家族への説明や,合併症へのリスク管理,臨床研究,新規医療機器および技術導入に生かせるものと考えられる.また,annual reportとして本誌への掲載されることにより,わが国の現状を学会発表や論文において,出典を銘記した上で有力な情報として引用できるようになっている.

今回の2019年1年分の集計解析は,2021年の間にJCIC-Rワーキンググループにより多大なる時間と労力をかけて行われた.同期間のレジストリー活動の進歩としては,新規医療機器導入,とくに市販後調査へのレジストリーデータの利活用や,日本医療研究開発機構や医薬品医療機器総合機構の研究事業への応用が挙げられる.2020年からはaudit業務実運用し,データの質と悉皆登録を担保できるようになった.今後は,さらなる学術的データ利用の促進,JCIC認定医・閉鎖栓施設術者認定業務への利活用を進めていく方針である.JCIC会員の皆様には,引き続き日頃のカテーテル治療全例のJCIC-Rへご入力頂き,また,新規医療機器市販後調査のJCIC-R上での登録により本事業にご協力頂ければ幸いである.その成果は必ず皆様のお手元に還元し,先天性心疾患,川崎病心血管後遺症,頻拍性不整脈に対するカテーテル治療の進歩に寄与できるものと考える.

謝辞Acknowledgments

2019年カテーテル治療をJCIC-Rへご入力頂いた全ての施設の担当医師,データマネージャー,診療科長各位,ならびに多大なご指導とご支援を頂いているNCD JCIC-R担当の立森久照先生(東京大学医学系研究科医療品質評価学講座,国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター),古川将太郎様に深謝致します.

引用文献References

1)金 成海,松井彦郎,犬塚 亮,ほか:2016年における先天性心疾患及び小児期頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計~日本Pediatric Interventional Cardiology学会データベース(JPIC-DB)からの年次報告~. Journal of JPIC 2017; 2(2): 43–55

2)芳本 潤,犬塚 亮,松井彦郎,ほか:2017年における先天性心疾患及び小児期頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計~日本Pediatric Interventional Cardiology学会データベース(JPIC-DB)からの年次報告~. Journal of JPIC 2018; 3(2): 43–55

3)金 成海,松井彦郎,犬塚 亮,ほか:2018年における先天性心疾患,川崎病および小児期頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計~日本先天性心疾患インターベンション学会レジストリー(JCIC-Registry)(旧日本Pediatric Interventional Cardiology学会データベース(JPIC-DB))からの年次報告~. Journal of JCIC 2019; 4(2): 24–38

4)金 成海,松井彦郎,犬塚 亮,ほか:日本Pediatric Interventional Cardiology(JPIC)学会データベースの構築.日小児循環器会誌2015; 30(1–2): 30-38

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