Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
JCIC学会事務局 JCIC学会事務局
〒162-0801東京都新宿区山吹町358-5アカデミーセンター Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Journal of JCIC 4(2): 24-38 (2019)
doi:10.20599/jjcic.4.24

Annual ReportAnnual Report

2018年における先天性心疾患,川崎病および頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計日本先天性心疾患インターベンション学会レジストリー(JCIC-Registry)(旧日本Pediatric Interventional Cardiology学会データベース(JPIC-DB))からの年次報告Nationwide registry data of catheter interventions and ablations for congenital heart disease, Kawasaki disease, and tachyarrhythmias in Japan during 2018: Annual report from Japanese Congenital Interventional Cardiology Registry (JCIC-R) (former Japanese Pediatric Interventional Cardiology Database (JPIC-DB))

1日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)調査委員会JCICレジストリーワーキンググループJCIC-Registry Working Group, Investigational Committee

2日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)理事会Executive Board of the Japanese Society of Congenital Interventional Cardiology (JCIC)

3静岡県立こども病院循環器科Department of Cardiology, Shizuoka Children’s Hospital, Shizuoka, Japan

4東京大学医学部附属病院小児科Department of Pediatrics, Tokyo University Hospital, Tokyo, Japan

5大阪母子医療センター小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Osaka Women’s and Children’s Medical Center, Osaka, Japan

6国立循環器病研究センター小児循環器内科Department of Pediatric Cardiology, National Cerebral and Cardiovascular Center, Osaka, Japan

7東京大学大学院医学系研究科医療品質学講座Department of Healthcare Quality Assessment Graduate School of Medicine, Tokyo University, Tokyo, Japan

8久留米大学医学部小児科学講座Department of Pediatrics, Kurume University School of medicine, Kurume, Japan

9中京病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Chukyo Hospital, Aichi, Japan

10東京女子医科大学循環器小児科Department of Pediatric Cardiology, Tokyo Women’s Medical University, Tokyo, Japan

11昭和大学病院小児循環器・成人先天性心疾患センターPediatric Heart Disease and Adult Congenital Heart Disease Center, Showa University Hospital, Tokyo, Japan

12榊原記念病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Sakakibara Heart Institute, Tokyo, Japan

13埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科Department of Pediatric Cardiology, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan

14岡山大学病院小児循環器科Department of Pediatric Cardiology, Okayama University Hospital, Okayama, Japan

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These authors equally contributed.

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These authors equally contributed.

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These authors equally contributed.

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These authors equally contributed.

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These authors equally contributed.

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These authors equally contributed.

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These authors equally contributed.

受付日:2020年2月7日Received: February 7, 2020
受理日:2020年2月14日Accepted: February 14, 2020
発行日:2020年3月31日Published: March 31, 2020
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一般社団法人日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)(旧日本Pediatric Interventional Cardiology(JPIC)学会)では,1993年よりカテーテル治療の手技・件数・有害事象に関する全国アンケート集計が継続されてきた.2013年より日本先天性心疾患インターベンション学会レジストリー(JCIC-R)(旧JPICデータベース(JPIC-DB))の実運用を開始し,3年の移行期間を経て,2016年からすべてJCIC-Rに登録されている.本稿では3年目の2018年における4,909件の集計について報告する.2020年1月より学会名称変更に伴い本レジストリーの名称も変更となった後も,登録対象を小児期から成人期にかけての先天性心疾患のみならず,川崎病心血管後遺症や,正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈に対するあらゆるカテーテル治療手技と有害事象を含めるという,一国の包括的リアルワールドデータであることには変わりない.今後も,ベンチマーキング,リスク層別化,多施設共同研究,新規医療機器導入および認定事業等,多方面に有効活用して頂けるよう更新を重ねていく.

The Japanese Society of Congenital Interventional Cardiology (JCIC) had conducted the annual questionnaire surveillance regarding catheter-based interventional procedures and adverse events since 1993. The online registry system named JCIC-Registry (JCIC-R) went into operation with the initial enrollment of the actual cases since January 2013. After three years of transition period, the entire interventional and ablation cases since 2016 in Japan have been registered to the JCIC-R, while the aggregated data with 4,909 procedures during 2018. After the alteration of the name of the society in January 2020, the JCIC-R maintains the specific feature of the nationwide comprehensive real-world registry involving any types of interventions and ablations for congenital heart disease, cardiovascular sequelae following Kawasaki disease, and tachyarrhythmias. We will continuously update the registry to be utilized for benchmarking, risk stratification, multi-institutional investigation, and new device and its approval process.

Key words: catheter intervention; catheter ablation; database; registry; the Japanese Society of Congenital Interventional Cardiology (JCIC)

はじめに

2018年の1年間に日本先天性心疾患インターベンション学会レジストリー(JCIC-Registry; JCIC-R)(旧JPICデータベース(JPIC-DB))に登録されたカテーテル治療手技と有害事象の集計を報告する.

対象および方法

旧一般社団法人日本Pediatric Interventional Cardiology(JPIC)学会は,2020年1月より一般社団法人日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC学会)と名称変更された.これは,とくに先天性心疾患においては小児期に限らず,成人期に移行したカテーテル治療をも対象とする現在の本学会の取り組みを反映するものであり,同時に名称変更としたJCIC-Rにおいても,

  • 小児期から成人期にかけての先天性心疾患
  • 川崎病心血管後遺症
  • 正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈

これらすべてのカテーテル治療手技と有害事象を包括的に対象とすることには変わりない.

2018年の1年間に,National Clinical Database(NCD)において全国105施設でJCIC-Rが開設され,そのうち92施設(Table 5)から実施されたカテーテル治療が登録された.2016年の登録からJCIC-Rへの登録に完全移行し,2016年,2017年の集計結果が本誌にannual reportとして掲載されている1, 2).従来の全国アンケート集計と比較して,治療手技,標的部位,有害事象の分類が細分化されているが,毎年登録者からの指摘や,新しい治療手技に対応して登録システムを更新している.また,厳密なカウント方法として,「件数」は複数治療手技が施行された場合を含めた延べ数,「セッション数」は複数手技が施行された場合を一括とした治療件数,「例数」は年間に複数セッションが行われた場合に同一症例を一括とした症例数,と定義しており,今回の集計でも同じ方法が継続されている.さらに今回の集計からは,年齢層を小児科学および児童福祉法の分類に沿うように,日齢28以下,29日以上1歳未満,1歳以上3歳未満,3歳以上15歳未満,15歳以上20歳未満,20歳以上の6群に分類することにした.

結果

2018年の1年間に,4909件(4574セッション,4481例)の治療手技が登録され,過去2年と比較して増加傾向を示した.4574セッションのうち,300セッション以上に複数インターベンションが行われたことになる.例えば,バルーン拡張術での左右肺動脈などの標的部位の違い,塞栓術と拡張術の同時施行,留置術直後の脱落に引き続く回収術などが複数インターベンションに含まれる.4909件中,非アブレーションのカテーテル治療は4473件(4057例)で増加傾向,アブレーションは436件(424例)であり,ほぼ横ばいの推移であった(Fig. 1, Table 1).

Journal of JCIC 4(2): 24-38 (2019)

Fig. 1 Annual changes of numbers of procedures since 2015. After 2016, all of the procedures are registered into JCIC-Registry

*Intervention-Q: enrolled in JPIC annual questionnaire survey on interventional (non-ablation) procedures. Intervention-R: enrolled in JCIC-Registry on interventional (non-ablation) procedures. Ablation-Q: enrolled in JPIC annual questionnaire survey on ablational procedures. Ablation-R: enrolled in JCIC-Registry on ablational procedures.

Table 1 Overview of annual interventional and ablation procedures from the JPIC-DB during 2018

Table 2では,非アブレーション,Table 3ではアブレーション,それぞれにおける手技別,標的部位別の件数を示す.併せて,有害事象,死亡,年齢分布,未完了件数,使用器具について解析している.手技の「完了」・「未完了」については,標的部位でのバルーン・ステント拡大,デバイスの固定等,手技的完了の有無で定義されている.また,有害事象については循環動態や全身状態への有意な影響をもたらすレベルの事象を定義している.厳密な定義づけはデータ収集において非常に重要であり,JCIC学会ホームページに掲載されている入力マニュアルやJCIC-R(旧JPIC-DB)の総説3)に記載され,データ入力画面でも入力支援として明示されている.

Table 2 Analysis of the non-ablation (non-EP intervention) procedures
Table 3 Analysis of the ablation procedures

合併症率(対件数)は,3.8%(非アブレーション4.0%,アブレーション1.8%)であった.重篤な有害事象として死亡が8件登録され,いずれも非アブレーションに認められた.その内訳をTable 4に示す.有害事象,死亡発生件数は,概ね2015年から多少の増減はあるものの大きな変化はない.手技別に見ると例年140~160件施行されるstent implantationの有害事象発生率が主な治療手技の中では依然として最も高く,14.4%となっていた.また心肺蘇生を必要とした有害事象の率が平均(10%)以上であった手技としては,Balloon Valvuloplasty, stent implantation, Balloon Dilationの順で,それぞれ27%,18%,10%であった.

Table 4 Summary of the mortality cases
Table 5 List of institutions which enrolled the actual procedures during 2018
2018年症例登録施設(計92施設) (JCIC開設計105施設)
北海道立子ども総合医療・療育センター小児循環器内科
北海道大学病院小児科
手稲渓仁会病院小児循環器科
旭川医科大学病院小児科
弘前大学医学部附属病院小児科
岩手医科大学附属病院循環器小児科
秋田大学医学部附属病院小児科
山形大学医学部附属病院小児科
宮城県立こども病院循環器科
福島県立医科大学附属病院小児科
茨城県立こども病院小児循環器科
筑波大学附属病院小児科
自治医科大学附属病院小児科
群馬県立小児医療センター心臓先天性
獨協医科大学病院小児科
埼玉県立小児医療センター循環器科
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
千葉県こども病院循環器内科
千葉県循環器病センター小児科
松戸市立総合医療センター小児科
東京慈恵会医科大学附属病院小児科
東京女子医科大学病院循環器小児科
慶應義塾大学病院小児科
順天堂大学医学部附属順天堂医院小児科・思春期科
東邦大学医療センター大森病院小児科
日本赤十字社医療センター小児科
日本医科大学付属病院小児科
榊原記念病院小児循環器科
東京都立小児総合医療センター循環器科
国立成育医療研究センター循環器科
東京大学医学部附属病院小児科 循環器班
昭和大学病院小児循環器・成人先天性心疾患センター
東京医科歯科大学医学部附属病院小児科
横浜市立大学附属病院小児循環器
北里大学病院小児科
聖マリアンナ医科大学病院小児科
神奈川県立こども医療センター循環器内科
新潟市民病院小児科
新潟大学医歯学総合病院小児科
富山大学附属病院小児科
福井循環器病院小児科
山梨大学医学部附属病院小児科・新生児集中治療部
長野県立こども病院循環器小児科
岐阜県総合医療センター小児循環器内科
大垣市民病院第二小児科(小児循環器新生児科)
静岡県立こども病院循環器科
聖隷浜松病院心臓血管外科
浜松医科大学医学部附属病院小児科
名古屋第二赤十字病院小児科
名古屋市立大学病院小児科
独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院小児循環器科
あいち小児保健医療総合センター循環器科
三重大学医学部附属病院小児科
滋賀医科大学医学部附属病院小児科
京都府立医科大学附属病院小児循環器・腎臓科
京都大学医学部附属病院小児科
大阪母子医療センター小児循環器科
大阪医科大学附属病院小児科
関西医科大学附属病院小児科 小児循環器科
公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院小児循環器科
近畿大学医学部附属病院小児科
大阪市立総合医療センター小児循環器内科・小児不整脈科
国立循環器病研究センター小児循環器科
大阪大学医学部附属病院小児科循環器
兵庫県立こども病院循環器内科
兵庫県立尼崎総合医療センター小児循環器内科
加古川中央市民病院小児科
奈良県立医科大学附属病院小児科
天理よろづ相談所病院先天性心疾患センター
和歌山県立医科大学附属病院小児科
鳥取大学医学部附属病院小児科
島根大学医学部附属病院小児科
倉敷中央病院小児科
岡山大学病院小児循環器科
広島市立広島市民病院循環器小児科
あかね会土谷総合病院小児科
山口県済生会下関総合病院小児科
山口大学医学部附属病院小児科
徳島大学病院小児循環器科
四国こどもとおとなの医療センター小児循環器内科
愛媛大学医学部附属病院小児科
独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院小児科
福岡市立こども病院小児科(循環器)
大分県立病院小児科
久留米大学病院小児科
聖マリア病院小児循環器内科
九州大学病院小児科
熊本市立熊本市民病院小児循環器内科
宮崎大学医学部附属病院小児科
県立宮崎病院小児科
鹿児島大学病院小児科
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児循環器科

考察

今回の報告で全国の3年間の小児期から成人期にかけての先天性心疾患,川崎病心血管後遺症,正常心構造を含む小児期頻拍性不整脈に対するカテーテル治療手技と有害事象の包括的リアルワールドデータが蓄積されたことになる.JCIC-Rの当初からの構築デザインとして,ベンチマーキング(患者説明や自施設治療成績のための参照データ),リスク層別化研究,学術的な多施設共同研究,新規医療機器導入および認定事業等,多方面に有効活用されることを主眼としていた.そのため,基礎疾患診断名(fundamental diagnosis)と既往手術手技名は,STS(the Society of Thoracic Surgeons)データベースとJCVSD Congenital(日本先天性心臓血管外科データベース先天性部門)に共通の分類にもとづいている.そして,治療手技,標的部位,合併症についても,国内外において行政や企業への情報共有が可能な専門用語にもとづき細分化されている.本領域の最新の知見に対応しながら,患者および家族への説明や,合併症へのリスク管理,臨床研究,新規医療機器および技術導入に生かせるものと考えられる.また,annual reportとして本誌への掲載されることにより,わが国の現状を学会発表や論文において,出典を銘記した上で有力な情報として引用できるようになっている.今回の2018年の集計解析は,翌2019年の間にJCIC-Rワーキンググループにより多大なる時間と労力をかけて行われた.同期間のレジストリー活動の進歩としては,新規医療機器導入,とくにHBD for Children活動,市販後調査へのレジストリーデータの利活用や,日本医療研究開発機構の医薬品等規制緩和・評価研究事業,医薬品医療機器総合機構の研究事業への応用が挙げられる.2020年度の課題として,このような事業拡大への対応と同時に,データの質と悉皆登録のためのaudit業務の導入,学術的データ利用の促進,JCIC認定医・閉鎖栓施設術者認定業務への利活用を挙げている.JCIC会員の皆様には,引き続き日頃のカテーテル治療全例のJCIC-Rへご入力頂き,また,新規医療機器市販後調査のJCIC-R上での登録により本事業にご協力頂ければ幸いである.その成果は必ず皆様のお手元に還元し,先天性心疾患,川崎病心血管後遺症,頻拍性不整脈に対するカテーテル治療の進歩に寄与できるものと考える.

謝辞Acknowledgments

2018年カテーテル治療をJCIC-Rへご入力頂いた全ての施設の担当医師,データマネージャー,診療科長各位,ならびに多大なご指導とご支援を頂いているNCD JCIC-R担当の立森久照先生(東京大学医学系研究科医療品質評価学講座,国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター),大井朝子様に深謝致します.

引用文献References

1) 金 成海, 松井彦郎, 犬塚 亮,ほか:2016年における先天性心疾患及び小児期頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計~日本Pediatric Interventional Cardiology学会データベース(JPIC-DB)からの年次報告~.Journal of JPIC 2017; 2(2): 43–55

2) 芳本 潤, 犬塚 亮,松井彦郎,ほか:2017年における先天性心疾患及び小児期頻拍性不整脈に対するカテーテルインターベンション・アブレーション全国集計~日本Pediatric Interventional Cardiology学会データベース(JPIC-DB)からの年次報告~.Journal of JPIC 2018; 3(2): 43–55

3) 金 成海,松井彦郎,犬塚 亮,ほか:日本Pediatric Interventional Cardiology(JPIC)学会データベースの構築.日小児循環器会誌2015; 30(1–2): 30–38

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