Journal of JCIC

Online edition: ISSN 2432–2342
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Journal of JCIC 10(1): 1-2 (2025)
doi:10.20599/jjcic.10.1

富田賞受賞報告富田賞受賞報告

富田賞受賞研究課題に関する報告と経皮的動脈管開存閉鎖術における放射線被ばく低減の取り組みReport on the Tomita Award and efforts to reduce radiation exposure in percutaneous catheter closure of patent ductus arteriosus

静岡県立こども病院循環器科Department of Cardiology, Shizuoka Children’s Hospital ◇ Shizuoka, Japan

受付日:2025年9月5日Received: September 5, 2025
受理日:2025年9月18日Accepted: September 18, 2025
発行日:2025年12月20日Published: December 20, 2025
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Key words: radiation exposure; patent ductus arteriosus; JCIC-registry

はじめに

2022年の富田賞受賞研究課題「日本における小児心臓カテーテルインターベンションの被ばく線量の把握と標準化」について,研究課題の進捗状況と当院における放射線被ばく低減の取り組みを報告する.

本研究は小児心臓カテーテル検査・治療における放射線被ばくの実態を明らかにし,最適化を図るとともに,体格を考慮した手技別の診断参考レベル(Diagnostic Reference Level; DRL)を策定することを目的としている.

JCIC-Rを基盤とした手技別のDRL策定の意義

小児は放射線感受性が高く,複雑心奇形においては検査・治療の頻度も多い.2020年4月施行の医療法施行規則改正により,放射線被ばく線量の管理が制度化され,各施設で線量を把握し最適化を図ることが義務づけられた1).医療被ばく研究情報ネットワーク(Japan Network for Research and Information on Medical Exposure; J-RIME)の取り組みによって同年に改訂されたJapan DRLs 2020では小児心臓カテーテル検査・治療に関する値が初めて示され,2025年に改訂されたDRLs 2025では年齢幅区分と体重幅区分による患者照射基準点線量(Air kerma at the patient entrance reference point; Ka,r),面積空気カーマ積算値(Air kerma-area product; PKA)が示された2).これは国内の小児循環器学会修練施設に対するアンケート調査に基づいており,DRLs 2025は治療カテーテルの症例数が195例で,手技別の基準はない.JCIC-Rを用いた手技別の基準の策定はより実臨床に則した被ばく線量の把握と標準化に寄与すると考えられる.

JCIC-Rにおける被ばく関連項目の追加と注意点

当院では過去にPKAを体重で除したPKA/BWが年齢・体格差を考慮した実効線量に相関する比較指標として有用であることを再確認し日本小児循環器学会雑誌に報告した3).JCIC-Rでは被ばく線量の指標としてKa,r(旧空気カーマ値;Air Kerma,単位はmGy)に加えて,2025年より面積空気カーマ積算値(PKA; Product of air Kerma and Area)の登録が開始された.PKAはX線ビームが患者の皮膚に当たる面積とその位置での空気カーマを掛け合わせて積算した値で,面積線量積(DAP; Dose area product)やKAP; Kerma-area productとも表記される.単位はGy·cm2.ここで注意が必要なのは文献や装置によってはµGy·m2やcGy·cm2, mGy·cm2という表記がされていることである.JCIC-Rでは日本のDRLsに合わせてGy·cm2が採用された.当院で使用しているSIEMENS社製の撮像装置ではµGy·m2の表記が用いられている.例えば装置の表記が100 µGy·m2の場合,JCIC-Rに入力する数値は1 Gy·cm2となる.入力ミスを防ぐために換算表の作成や各施設のシステムで自動変換を行えるような工夫が必要となる.

自施設での被ばく低減の取り組みと成果

2025年のJCIC学会で経皮的動脈管閉鎖術における被ばく低減の取り組みと2 kg未満の極低出生体重児への応用を報告した.本研究は2019年1月から2024年9月に施行した5歳未満47例を対象に,L群(<2 kg静脈穿刺のみ),T群(≧2 kg動脈穿刺のみ治療),D群(≧2 kg動静脈穿刺治療)で比較した.Ka,rはL, T群で低く,PKA/BWはT群よりL, D群で高値であったが全例でPKA/BW>1の症例はなかった.細い動脈管の症例では動脈穿刺のみで治療することで更なる被ばく低減が可能であり2 kg未満でも皮膚障害リスク指標であるKa,rを低く抑えられた(Table 1, Fig. 1).

Table 1 Patient characteristics
Group LGroup TGroup D
Patients61526
SexFemale/Male2/45/10
Body weight (kg)Median
[IQR]
1.1
[1.0, 1.3]
12.5
[11.0, 18.1]
9.1
[5.5, 13.7]
Age (Month)Median
[IQR]
043.0
[27.0, 51.0]
16.0
[5.8, 34.5]
DevicePiccolo639
Flipper0114
ADO1007
ADO2016
ADO; Amplatzer Duct Occuluder
Journal of JCIC 10(1): 1-2 (2025)

Fig. 1 Box and whisker plots of parameters in each group

最後に

JCIC学会の尽力により,手技別にPKA /BW含めた被ばく線量に関する全国的なデータ収集が可能となった.米国のC3PO-QI(Congenital Cardiac Catheterization Project on Outcomes-Quality Improvement)ではPKA/BWを用いた手技による被ばくリスクの層別化や介入による放射線被ばくの低減効果が報告されている4).本研究はJCIC-Rを基とし,手技や体格を考慮した日本における小児心臓カテーテルインターベンションの被ばく線量の把握と標準化,ひいては放射線被ばく低減に貢献することが期待される.よりよいデータ構築のため,各施設での協力を願いたい.

引用文献References

1) 厚生労働省医政局長:医療法施行規則一部を改正する省令の施行等について(医政発0312第7号).2019.https://ndrecovery.niph.go.jp/trustrad/images/notification0312_7.pdf(2025年7月30日閲覧)

2) 日本診断参考レベル策定委員会:2025年版 日本の診断参考レベル Japan DRLs 2025.医療被ばく研究情報ネットワーク(Japan Network for Research and Information on Medical Exposures);2025.https://j-rime.qst.go.jp/report/JapanDRLs2025_ja.pdf(2025年8月11日閲覧)

3) 真田和哉,金 成海,石垣瑞彦,ほか.小児心臓カテーテルにおける年代と技術の変遷に伴う被ばく低減の取り組みと効果:面積線量積/体重比によるモニタリングの有用性.日小循誌2021; 37(1): 18–26

4) Quinn BP, Armstrong AK, Bauser-Heaton HD, et al: Congenital Cardiac Catheterization Project on Outcomes-Quality Improvement (C3PO-QI): Radiation risk categories in cardiac catheterization for congenital heart disease: a tool to aid in the evaluation of radiation outcomes. Pediatr Cardiol 2019; 40: 445–453 doi:10.1007/s00246-018-2024-3

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